このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2017/05  vol.187
 今年のゴールデンウィークは天候にも恵まれ、全国的に絶好の行楽日和となりました。皆様も思い思いの休日をお過ごしになったことと思います。私はというと、読書に明け暮れておりました。
 さて、前回の続きとなりますが、今回も不動産投資について触れたいと思います。昨今、異様な盛り上がりを見せる不動産投資市場ですが、人々の投資目的とはいったい何なのでしょうか?それぞれ目的が異なるのは当然のことですが、数年前までの市場と大きく異なる点は、購入と同時に含み損を抱える心配が少なくなったこと。これは投資マインドに大きく影響しているものと考えられます。失われた20年に象徴されるように、これまでの右肩下がりを続けた環境下では、買う側もそれを担保に融資する金融機関にもリスクが伴いました。しかし、ここ数年は一転して地価のV字回復が見られリスクも低減しております。一方、過剰供給によりこれまで以上の空室リスクと向き合わなくてはならないのも事実です。この点で、日銀や金融庁が警鐘を鳴らしているのは以前もお話した通りですが、私は不動産投資の一番のメリットは資産圧縮効果にあると思います。
 今さらの話ではありますが、個人が1億円の現金を保有していれば、相続時の評価は同じ1億円です。しかし、そのうち5千万円で土地を購入した場合、土地は路線価で評価されますので、時価の約8割に相当する4千万円の評価となります。更にこの土地に残り5千万円の資金を投じて賃貸アパートを建築したとします。建物は固定資産評価額で評価されますので、時価の6割程度すなわち3千万円となります。これだけに留まりません。建物を賃貸することにより借家権が発生し評価額が割り引かれ、底地についても一定の評価減が適用されます。借地権割合と借家権割合は地域や立地により異なりますので、ここでは計算過程を省略しますが、土地建物の評価は5千6百万円程度になる計算です。簡単に言うと1億円の現金を半分に圧縮するほどの効果が得られます。半分損したように思われる方もおいでかと思いますが、これはあくまでも相続評価上の話ですので、決して損をしたわけではありません。参考までに、毎年政治家の資産が公開されますが、この制度に基づく不動産の価格とは、土地建物ともに固定資産税課税標準額を採用しております。特に住宅用家屋の底地の課税標準額ともなると時価の数分の1程に留まりますので、公開されている数字はあまり意味のないものと言えます。
 さて、話は戻ります。先ほどは1億円の現金を投じた場合の話でしたが、1億円の借り入れをおこして同様に5千万円の土地と5千万円のアパートに投資したとします。この場合も、初年度の借入残高1億円に対し資産が半分程度にしか評価されませんので、単純に差引5千万円の負債が発生する計算となります。もっと極端な例を挙げるとすれば、タワマン税制が象徴的です。今年度の税改正で若干のテコ入れが行われたものの、依然として高い税効果が得られるのが特徴です。もともとマンションの場合、販売価格と評価額とのギャップは他の不動産に比べても大きく、階層や間取りに関係なく同じ単価で評価されてきました。特にタワーマンションの場合は、販売価格の差が低層階と上層階で大きく異なる為、評価とのギャップは更に拡大する上、中古市場でも人気が高く換金性が高いことで絶好の投資対象とされてきました。今回の税改正では既分譲の評価はそのままで既得権益に配慮したともいえる内容に留まりました。
 最後に、前述の借り入れによる投資の場合ですが、デッドクロスに注意が必要です。いわゆる「勘定合って銭足らず」の状態です。本来、手元に残るべき利益のほとんどは借り入れの元本返済に充てられる為、経費にはなりません。釈迦に説法だと思いますが、税務上の経費といえば利息と減価償却費程度となりますので、返済で手元に現金が残っていないにも拘わらず帳簿上大きく利益が発生する場合があります。薄いキャッシュに対し税務上の所得が大きいと、キャッシュと税負担の逆転現象が生じ事業単体では資金ショートに陥ることもありますので、キャッシュフローを意識した運用が大切と言えます。
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