このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2018/11  vol.205
 色づき始めた山々の紅葉と朝晩の冷え込みに秋の深まりを感じる今日この頃です。季節の変わり目でもあります。皆様体調管理にはくれぐれもご注意下さい。
 東京オリンピックを2年後に控え、東京都内では会場などのインフラ整備に加え、ホテルやオフィスビル、マンションの供給ラッシュが続いています。局地的好況は仙台市内も例外ではなく、市内のいたる所で建築現場を見ることが出来ます。不動産取引を例に挙げれば、これまで何らかの理由で塩漬けとなっていたような物件でさえ動きがみられます。特殊な事情を除けば、大げさかもしれませんが、このタイミングで取引が成立しなかった物件に次の機会はないのではと思えるくらいです。そこで誰もが感心を示すのが、「この市場がいつまで続くのか?いつ下がるのか?誰がババを引くのか?」です。残念ながら、その答えを私は持ち合わせていません。ただ言えるのは、金融機関の引き締めや住宅市場にブレーキがかかり各社の出口戦略に陰りが見え始めているのは事実です。それでも商業地などでは未だ高止まり状態が続いていることに違和感を覚えます。高止まりというとあとは下がるだけのイメージが強いですが、実際には希少地ほど入札などによる手法が用いられ、落札者が2番札以下を圧倒的高値でつき離して落札する例も少なくなく、これにより新たな相場が形成されることも珍しくなりません。この現状を見る限り、局地的高値相場はしばらく続き需要と価格の二極化が加速しそうな印象を受けます。
 さて、土地に関連することで我々にも身近なマンションのお話を少しだけ。東京都が老朽マンション対策として土地に対する容積率の緩和を打ち出し建て替えを支援する制度をスタートさせるそうです。背景には大地震などの災害に備える狙いがあるとみられます。興味深いのでマンションのストックについて調べてみました。国交省のデータでは全国の分譲マンションのストック総戸数は約644.1万戸(平成29年末時点)でマンションの居住人口は約1533万人と推計され、国民の約1割にあたることが分かりました。このうち旧耐震基準のストックが約104万戸、更に築40年超のマンションは72.9万戸あるそうです。この数字に対しマンションの建て替え実施状況ですが、震災等による特殊な建て替えを含めても百数十例にしか満たないという厳しい現実があります。これは、法的な障壁が大きいのはもちろんのことですが、実務的にはそれ以上の権利調整が山積し、それぞれの権利と個別の経済環境によるいわゆる所有者間の温度差も大きいと言えるでしょう。例えば、終の棲家と思って購入される方もいれば、次へのステップと考える方もいらっしゃるでしょうし、最近では投資対象やセカンドハウスとして購入される方も多いと思います。所有者の経済環境も異なれば、世代も様々です。そこに住居以外の店舗・事務所が混在しているケースもあれば、相続登記手続きが完了していない住戸も珍しくないはずです。途中でリフォームを行なうなど住戸ごとの残存価値も様々でしょうし、外国人投資家や賃借人などの権利が加わってくると話は更に複雑化します。また、完成後に建築基準法の改正を受け、現行法に照らし合わせた際に容積オーバーとなる既存不適格建物では、建て替え時に現状と同規模の面積を確保できないケースも少なくないはずです。私が知るこれまでの建て替え例では、都心の超一等地の希少地や、郊外の広大地で容積率も建ぺい率にも余裕があるなど、建て替えに適した環境が前提にあり、住人間の合意形成が無ければ実現不可能と結論付けることができます。前者は容積の緩和などを受けて従前戸数を大きく上回る規模を確保し保留床の譲渡により事業費を捻出し実現したものと考えられます。後者はA地とB地で一団の敷地が形成され、A地がマンション敷地でB地が駐車場などと仮定します。A地をデベロッパーなどの事業者に譲渡し、B地へ建て替えます。事業資金はA地の譲渡益とB地建て替え時の保留床の販売により捻出し実現したものと想像できます。何れの場合もデベロッパーの協力は不可欠であり、所有者の経済的負担を最小限に抑え、かつ販売が見込める市場であることが最も重要であることは説明するまでもありません。これらを満たすマンションは前述の建て替え数が物語るように極めて稀なケースと言えます。自治体ごとの条例だけでは老朽マンション対策にも限界があり、国民の生命と財産を守るための法整備が急がれます。
    次を表示