このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2019/04  vol.210
 新元号が発表されました。平成の世も残すところ1ヶ月を切り、いよいよ新たな時代令和の幕開けとなります。そして、天皇の退位と即位という歴史的瞬間に立ち会えるという機会に10連休が重なり、国内はお祝いムードに包まれています。
 そのお祝いムードの中ではありますが、日銀の短観によると足元の景気は決して楽観できるものではなくなっているようです。世界の経済情勢も相変わらず不安定で株価も乱高下が続いております。そんな中、先ごろ公示地価が発表され、地価上昇のすそ野も地方へと波及し広く行き渡った感がありますが実際はどうでしょうか?どのような分野においても言えることですが、広く末端までブームや認知度が高まり共有されるころには既にピークが過ぎていることが殆どです。特に地価公示や路線価などの公的評価は1年くらいのタイムラグがあるため上昇から調整、下落への潮目の変化には見極めが必要です。実勢価格は既に調整局面に入りつつあるとも言え、早ければ来年の地価公示にはその結果が反映されるのではないかと思います。これまでも何度となくお話して参りましたが、地価上昇を下支えしてきたものは、国内の好景気を背景に世界的カネ余りと国内のゼロ金利政策、相続税の見直しによる不動産投資にオリンピックやインバウンド効果などの開発ラッシュ等々、いくつかの要因がタイミングよく重なったところが大きいと思われます。特に都市部では数年前から地価が上昇に転じており、「当面地価は下がらない、安定する」との見方が市場を支配し、その安心感が投資意欲を旺盛にしてきたとも言えます。競争原理も働き、我々業者も少々無理して仕入れても販売価格に転嫁できる余地がありました。これが一転すると、安心感が心理的マイナスへ変化し、市場に与えるダメージも少なくないと考えられます。
 私が記憶する限りでは、加熱する個人の不動産投資に対し日銀や金融庁が警鐘を鳴らし始めたのは2年ほど前に遡ります。まだ市場もイケイケの頃でしたので、関係者もどこ吹く風とばかりに積極投資を続けている最中のことでした。恐らくインフレ目標を掲げる国としても、異常なほどの不動産バブルは看過できない問題だったのではないでしょうか。どこで軟着陸させるのか、過るのはバブル崩壊の引き金となった総量規制と公定歩合引き上げです。
 いよいよ事態が暗転しはじめたのは、この間に発覚したシェアハウスを展開するS社の破たんとS銀行の不正改ざん問題、そしてほどなくして発覚したT社の通帳改ざん問題も記憶に新しいところです。この問題の前後から金融庁は各金融機関に通達を出し、不動産融資の実態把握を進めてきたようです。不動産投資への金融機関の姿勢が激変したのが昨年秋頃のことでしょうか。この頃から投資向け一棟物のアパート、マンションの在庫が目立ちはじめ、強気一辺倒だった売り手市場にも陰りが見えはじめました。それでは、この間にどのような変化が起きたのでしょうか。原則フルローンの禁止、諸経費等ある程度の自己資金が求められ、参入障壁が急に高くなったことは今後小資本で投資を検討している方々には歓迎できない事態です。金融庁の通達により金融機関は貸し出した資金に対しこれまで以上の管理を求めるため、より安全な貸し出しが要求されるようになりました。よって、担保掛目や事業単体での収支を厳格化することに舵が切られたのです。
 更に拍車をかけたのが、くすぶり続けていた火種が表面化したアパート大手L社の構造不正問題です。この問題を受け、国交省は他のアパートメーカーに対しても調査を開始すると明言しており、更なる問題が浮上しないとも限りません。これらの問題の元凶となった不正については、もちろんあってはならないことです。一方うがった見方かもしれませんが、一連の問題の表面化がやり玉となり不動産投資ブームに一定の区切りがもたらせることを一番望んだのは国かもしれません。
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