このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2018/05  vol.199
 先月、新年度ですなどと呑気なことを言っておりましたら、あっという間に景色は新緑へと移ろい、一年で最も過ごしやすい季節を迎えました。今年のゴールデンウィークは全国的に天候が不安定でしたが、皆様はどのような休日を過ごされたでしょうか?
 毎号コラムの題材に悩みながらも渋々と机に向かうわけですが、今回が199回目。実に16年も続けてきたことになります。200回を機会に執筆を卒業しようかなどと、近い方々に洩らしながらも、多くの励ましのお言葉を頂きながら今日に至っております。
 さて、最近話題の「サピエンス全史」をかじりながら、我々人類種の誕生や変化に触れるきっかけをもらいました。いつの間にか人類は惑星の境界を越え月面を歩き、核兵器を開発し、遺伝子コードさえも解読し始めました。そんな人類が、なぜ存続してきたのか大変興味深いものですが、そこにはいくつもの偶然や奇跡が重なります。
 二足歩行で木の上での生活を主としていた我々の祖先は、氷河期の地殻変動など生態系の変化の中、地上に降りては他の動物よりも手を使える分餌を確保するうえで優位に立ち、持ち帰った餌を少数で分け合いながら家族的なものを形成しました。しかし、地上での生活では常に他の動物の餌食となりやすく、次第に家族同士が集団で行動するようになると、そこにコミュニティが成立し、共存共栄するうえでの知恵が備わり始めたのです。人類種は250万年前には石器を用いたとされておりますが、石器により最初から大きな獲物を捕獲していたわけではなく、主食に植物や昆虫を集め、他の動物が残した残骸を漁るような生活を主としていたようです。石器は残された骨の骨髄を吸う道具として発展したと考えられているのです。次第に人類種は武器を作り狩猟をするようになると肉食により脳が拡大していきます。次の進化として、我々の祖先は30万年前には日常的に火を使っていたことが確認されています。火を用いて敵を威嚇することもできたでしょうし、森を焼き払い同時に獲物を捕獲するなど一石二鳥の術をあみ出していたのです。加えて、火を通し調理する方法を得たことにより口にできる食材の幅は広がり、結果的には寄生虫などからも身を守ることもできたのでしょう。
 他の動物のように決して大きくなく、身体能力に優れたわけでもなく、牙も体毛も持たず、もちろん空を飛ぶこともできない人類種は、変化に対応しながら生き残ってきたのです。そして、今様々な研究の中で、同時代に複数の人類種が存在し争いが繰り返されたことが明らかになっています。その中で我々の祖先ホモ・サピエンスだけが、なぜ食物連鎖の頂点に立ち生き残ってこられたのでしょうか?何も急な遺伝子の変異が起こったわけでもありません。言葉を持ち大量の情報を共有し伝える能力に長け、集団を統制できる仕組みがあったからです。それが文明社会の誕生と現代社会に通じるものであったことは想像に難しくありません。実は、他動物も鳴き声などの合図により仲間同士のコミュニケーションが取れるそうですが、人類種、しかもホモ・サピエンスだけが言葉を使って想像上の現実(例えば神話などの)を生み出す能力を備えていたため、他人同士が協力できる点において全ての生物より優れ、敵から身を守りながらコミュニティの安定と持続を可能にしたとされています。太古の昔を想像しながら我々のルーツと生態系の変遷を知るということと、様々な研究が進みこれまでの常識が更新されてゆくことは非常に興味深いものがあります。
 そんな何万年などという話をすると、我々の人生100年時代到来、ましてや冒頭のコラム16年間なんていうのはほんの一瞬であり、日常の些細なもめ事や悩みなどというのも大した重さに値しないもの。そう思うと少し気が楽になる反面、その与えられた1分1秒を大切にしなければならないとの思いが必然的に湧いてくるものです。書の結論はこんなところではありませんので、是非機会がありましたら読んでみて下さい。
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