このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2018/08  vol.202
 残暑お見舞い申し上げます。政府がこの夏の酷暑を災害と表現したように、各方面で暑さと豪雨による甚大な被害が報告されております。その中で最も悲惨な西日本豪雨からは1ヶ月が経過しましたが、残念なことに豪雨災害としては平成に入り最悪の記録となったそうです。我々はついつい災害を規模で表現し判断しがちですが、災害規模の大小に関わらず、そこには平穏な日常を奪われた個々の悲しみや想いがあることを忘れてはなりません。仙台の猛暑も例外ではありませんでした。連日日照りと暑さが続いたため雨が待たれていましたが、恵みの雨も一転、皮肉にも七夕前夜祭からお祭り期間中全て雨に見舞われるという有難くない天候となりました。雨のジンクス恐るべしです。
 話は180度変わり少しだけ海の向こうの話をしたいと思います。先だって、某企業のアメリカ視察に参加して参りましたので報告したいと思います。視察や研修という大義の観光旅行は数多ありますが、今回は正真正銘かつアメリカ大陸を6日間で横断する弾丸ツアーでありました。ニューヨークはマンハッタン、ブルックリン、ハーレムから、西海岸はサンタモニカ、ビバリーヒルズ、ハリウッドなど。歩いた距離は正味4日間で実に60kmですから、毎日ゴルフをしても到底辿りつかないほどの距離を歩いた計算になります。そこで、AI(人工知能)の時代が到来すると言われて久しいわけですが、正にアメリカはこの分野においても世界のけん引役であり、グーグルやアップル、アマゾンなど名だたる企業が名を連ねていることは説明するまでもありません。私どもの視察の目的はネットの世界ではなく、アメリカのリアル流通店舗のトレンドを知ることでした。以前はアメリカの流通は日本の100年先を行っていると揶揄される程その差は歴然でしたが、今はその差もずいぶんと縮小したとは思います。それもそのはず、我が国はスーパーやコンビニなどのチェーンストア理論の多くをアメリカに学びノウハウを輸出してきたからです。それでも絶えずアメリカの進化は続いており、この分野において今も世界の中心と言って間違いありません。そして、そこは人種の坩堝であり、各地・各店がそれぞれの特色を明確に打ち出しながら全く違う価値観の展開により成り立っています。不動産的視点では、一見すると観光客で賑わって見えるオールドタウンにも空きテナントが目立ち、その町の栄枯盛衰を物語っているかのような空気感が漂っていました。この点は日本と共通するところです。
 前出のアマゾンが昨年買収した高級スーパー「ホールフーズ」には、アマゾンの宅配ロッカーが設置されており、自宅への宅配を待たずに会社帰りなどに気軽に注文した商品を受け取れるサービスが開始されています。また、店内の空間やレイアウトなどはあらゆる面において洗練されており、インスタポイントもきちんとおさえてあります。更にイートインコーナーを進化させた「グローサラント」(グローサリーとレストランを掛けあわせた造語)など居心地を追求しながら、お客様個々のライフスタイルに応じた場所を提供しています。想像して頂ければ、スーパーの中にレストランがあり、店内で買い物したものをその場で楽しめるというスタイルです。グローサラントとは高級なお惣菜バイキングコーナーとでも表現した方が分かりやすいでしょうか。加えて言えば、洒落たバーやガーデンレストランのような演出が施されていて、一つのコミュニティが形成されている印象を受けました。日本でもグローサラントを導入している店舗も増えてきていると聞きますが、そこは発祥の地アメリカだけに一日の長があると言えそうです。
 ネットの普及によりリアル店舗の存在が問われはじめた昨今ではありますが、各店がバーチャルの世界にはない価値観を創造し食などを通じてコミュニティの場を提供しながら新たな需要を喚起する。そんな工夫と努力の形を感じました。そこで、現地の案内役の方がキーワードの一つとして挙げていたのが「時間の節約」でした。単にワンストップで買い物と食事を楽しめるということではなく、根底には豊かさや楽しさを体験できるという明確なコンセプトがあったように思えます。
 今回は縁あって異業種である流通業の視察ではありましたが、目の当たりにしたのは時代の先端に共通するワードであったことは間違いなく、モノからコトへという世界的な潮流を実感した次第です。私ども不動産の世界においても同様の動きが加速するものと思いますので、この度の経験を日常業務に役立てることができれば最高の収穫と考えております。
 末筆となりましたが、まだまだ暑さが続くようです。どうぞご自愛下さい。
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