このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2018/09  vol.203
 各地で大きな爪痕を残した今夏の酷暑と台風でしたが、同じ暑さと旋風でも嬉しいニュースもありました。この夏、東北を熱くした出来事と言えば、夏の甲子園で秋田県勢として実に103年ぶりとなる準優勝を果たした金足農業高校ナインの雄姿です。快進撃を続ける球児の姿を見て、以前仙台育英を準優勝に導いた佐々木前監督の「100回大会までに何とか(優勝)したい」という自信にも似た言葉が脳裏を過りました。残念ながら佐々木前監督の夢は野球部の不祥事による引責辞任という形で途絶えましたが、同じ東北の盟友がその夢を叶えてくれると期待は高まりました。しかも、平成最後の夏、そして記念すべき100回目の大会。舞台は整ったかに思えましたが、またしても大旗の白河超えは叶わぬものとなりました。甲子園の魔物なのか、東北の悲願は次の元号へと持ち越されましたが、平成の30年間で東北勢の準優勝は春夏合わせて実に8回。確実に全国との差は縮まっているのです。

 さて、少しだけ住宅の話をしたいと思います。我が国は第二次世界大戦の敗戦から世界に類を見ないスピードで焼け野原からの復興を果たしました。戦災に限らず、多湿な気候・地震・台風・火災による自然災害も多く、現存する歴史的な建造物は限られます。国土の特性と国自体が裕福でなかったことや、歴史的に異文化の交流が少なかったことも堅固な建物が生まれなかった要因かもしれません。何れ、世界の歴史ある都市において新旧の建物が混在し景観を形成しているのに対し、我が国の都市部の街並みはここ数十年で形成された極めて新しい街並みと表現することができます。
 特に高度経済成長期には風景が一変しました。都市部への人口集中が住宅需要に拍車をかけ、マイホームは豊かさの象徴とされてきたのです。関連産業も多く雇用と消費を期待でき経済効果の高い住宅産業は税制面においても、登録免許税や住宅ローン控除、更には贈与税や印紙税に至るまで、そして地方税では不動産取得税に固定資産税という具合に国策で支えられてきました。住宅版エコポイントや住まい給付金制度も消費増税等の経済の転換点において目玉政策として導入されてきたことは記憶に新しいところです。
 しかし、人口減少や環境への配慮などの経済合理性という観点からも新築政策にも限界があることは誰もが周知の事実であります。最近では地価並びに建築費の高騰を受け、更には住宅取得世代の価値観や嗜好性の変化なども重なり継承する文化が根付きつつあります。リノベーションなる分野が確立されたのもこのような背景があったと言えます。
 中古市場活性化の転換が迫られる中、業界団体からの働き掛けもあり、今年4月1日には改正宅建業法が施行され既存住宅には買主に対し建物状況調査実施状況の有無についての説明が義務付けられるようになりました。まだまだ制度自体が一般のお客様まで周知されておらず、仲介する宅建業者はお題目程度に説明するのが現状のようです。制度の一番のネックは、建物調査により物件の欠点を積極的に開示することが物件価値を下げる結果にもつながりかねない為、売主が調査を望まないという点にあると思われます。仮に健全な診断結果が出たところで売買価格にプラスアルファの付加価値を転嫁し難い市場性の問題もあります。もちろん、お墨付きが得られれば既存住宅保険を付保することができ売主にとっても安心して物件を売却できるというメリットもあるのです。一方、買主にとっても新築家屋同様に流通課税の減免や住宅ローン控除の対象となるだけでなく、事前に物件の特性を知ることや一定の範囲と期間で瑕疵保証を受けることができる点において大きなメリットがあると言えます。
 アメリカなどでは、購入後の住宅を住みながらリフォームして付加価値を高め転売する文化が根付いているそうです。完結型ではなく継承の文化です。戦後の政策において我が国は質より量を優先したあまり、安価でウサギ小屋と形容される住宅が供給されてきました。弊害として現代の生活様式や法規に対応できず、優先された新築政策と消費者の新築信仰が結果として中古住宅の価値を過小評価してきたのも事実です。しかし、昨今では住宅の性能や耐久性も格段に向上し、今後は優良な中古住宅が流通することが期待できます。確実に時代の変化は訪れようとしています。
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