このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2018/10  vol.204
 秋だというのに各地で残暑を思わせるような夏日が報告されておりますが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか?編集中は台風情報に耳を傾けなくてはなりませんでしたし、台風の当たり年と言っては被災地の方々に失礼かもしれませんが、ここのところ自然災害に翻弄された数か月間であります。
 今回は少しだけ趣味の話にお付き合い下さい。今年9月14日で69歳を迎えたロック界のカリスマ矢沢永吉が(親しみと敬意を込め以後永ちゃんと称します)、69にちなんだ「STAYROCK69」ツアー最終日の東京ドームで圧巻のステージを披露しました。ソロデビューから40年以上もの間、ほぼ休むことなく街から街へツアーを展開してきた永ちゃんですが、多い年ではそのステージは100回を超え、実は隠れた記録とされています。最近は年齢のせいもあってか、全国ツアーも大都市に集約され回数こそ減りましたが、ステージを縦横無尽に駆けながら息ひとつ乱れぬそのパフォーマンスに未だ衰えは感じられません。今回のツアーはファイナルの東京ドームの他、全国主要ドームなどの大会場に絞られ、年末恒例の武道館公演が行われない為、今年最後のステージということになりました。そんな永ちゃんがいまだに第一線で活躍し続けるパワーとは何なのかそのルーツに少しだけ触れてみたいと思います。
 運よくも、今回のツアーで某コンサート会場に足を運ぶことになりました。私が学生時代の永ちゃんのコンサートというと、ファン同士が一触即発というか、ケンカやもめ事も珍しくありませんでしたし、会場によっては次回使用禁止なんていうのもあったくらいです。永ちゃんの歩みと共にファンも良い意味で歳を重ね、マナーも格段に向上しました。そして、最近のコンサート会場は老若男女に親の影響かちびっ子ファンも見かけるようになりました。周囲は一目で永ちゃんのコンサートだと察することができるなり切りファンでごった返しますが、そこは、年に一度待ちに待ったお祭りのような雰囲気です。
 伝説のバンドキャロルが解散してソロデビューした後、あの大ベストセラー「成りあがり」とミリオンヒット「時間よ止まれ」で一躍時代の人となった永ちゃんですが、その後も一貫して自分の信念と音楽を追求してきたその生き様が人々を魅了するのだと思います。恵まれなかった生い立ちから、体一つで築き上げたドラマのようなサクセスストーリーが永ちゃんを孤高の存在へと押し上げていったのでしょう。「BIGになってやる」その一心が彼を走らせ、それぞれのファンが永ちゃんをリスペクトし、時にその生き様を自分の人生に重ね合わせてきたのだと思います。そして、時代はバブルに入り時代と共に少しずつ音楽の潮流も移り変わり、日本のミュージックシーンも何となくお洒落な方向に向かいつつありました。一方で、永ちゃんには熱狂的ファンが多く、一部ではツッパリの象徴、ヤンキーの兄貴分的なイメージが植え付けられた時代もありました。永ちゃんの個性とロックというジャンルの壁があるのも事実です。そのため、楽曲は決して万人受けするものではなくセールス的に大きな記録があるわけではありません。しかし、その音楽的クオリティは、ファンの贔屓目抜きにしても世界に通用するレベルであると言いきれます。反戦や社会への反逆、風刺、又は耳触りの良いような応援ソングや悟りの境地を開いたかのような押し付けがましい歌は世の中に五万とありますが、永ちゃんの楽曲のほとんどは愛をテーマにしたもの。それを独特の世界観で感情豊かに歌い上げます。そのメロディラインは天才と称される他のアーティストを遥かに凌ぐレベルにあることは間違いありません。世の中、悟りだゆとりだのと窮屈な時代になりましたが、誰もが悶々としたものを抱えながら過ごしている日々の中で、心の奥底にあるものを突き動かしてくれるもの。時代は巡り巡って、唾を飛ばしながら一生懸命自己主張するそんな生き方に共鳴している人が沢山いると私は信じています。
 企画・制作・運営・演出などに携わる経営者としての手腕、エンターティナーとしての圧倒的存在感、そして、唯一無二のアーティストとして異彩を放ち続ける矢沢永吉。日本が生んだ稀代のロックスターは腰を振り、シャウトし続ける。御年69歳、そのパフォーマンスをあと何年見ることができるのだろうか?皆様のその眼にも是非焼き付けて頂きたい。
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