このコラムは毎月10日マックスホームで発行しているコラムの
一部を抜粋したものです。
気宇壮大
2008/12  vol.86
 暖冬のせいでしょうか、年末商戦一色となった街も昨年以上に街路樹の葉が残っています。それでも、足早に家路を急ぐ人々の群れに師走の訪れを感じます。
 今年は残念ながら、我が国にとって激動の年と言わざるを得ない状況に突入してしまいました。予想されていたとは言え、アメリカの金融不安に端を発した世界不況がこれほどまでに我が国の経済に深刻な影響を与えようとは思いもよりませんでした。世間では早くも派遣労働者の雇用解除、いわゆる派遣切りが問題化しつつありますが、前回も触れたように今日の日本企業は既にスリム化しており、今回の人員削減は相当の痛みが伴うものと予想されます。本件については一言も二言も申したいことがありますが、時は年末、違う話題で締めたいと思います。
 先月末、自民党税制調査会は来年度の税制改正に向けて、景気刺激策の目玉として土地取引の活性化と住宅取得の促進を目的とする優遇税制を検討していることを明らかにしました。過去最大規模となる住宅ローン減税や不動産流通課税の減税措置延長に加え、不動産を譲渡した際の譲渡益に課税される譲渡所得税を3年間に限り非課税とする措置も検討されていると言うから驚きです。中でも特筆すべきは、不動産の譲渡税を非課税にすると言う秘策?です。現行の不動産譲渡所得税は、公共事業等による収用や居住用資産の譲渡等の特例を除けば譲渡益に対し、長期譲渡(所有期間5年以上)20%・短期譲渡(所有期間5年未満)39%(何れも個人の場合・住民税含む)の税率が課税されます。これまで、多くの売主様にとって納税額がいくらになるかは関心の高い問題でもありましたので、この法案が提出され成立すれば停滞する不動産取引の活性化につながるものと考えられます。
 しかしながら、実務面で考えると譲渡益が出る取引は以外に少ないのが実情だと思います。一部の不動産を除けば、日本の住宅地の地価は既に昭和50年代後半の水準にまで下がったとされています。それ以前に取得されたような土地に関しては今の相場で売却しても譲渡益が出ますが、平成に入ってから取得した土地を売却しても譲渡益はそうは出ません。それどころか、土地建物の取得原価が高ければ売却によりマイナスが生じることも少なくありません。現行法では、残念ながら売却損が出てもその所得から控除出来る損益は単年度のみで処理されます。本当に求められるのは、所得に対する損益を次年度以降にも繰越せることだと思います。バブル期に購入された不動産は、土地の値段はもちろんのこと建築費や金利も今とは比べ物にならないほど高く、現在の相場で売買しようとしてもローンの残高が相場を上回り、売るに売れない状況が多いのです。こうした不動産を抱えた方々の中にも買い替えを希望されている方々が沢山いらっしゃるはずです。幸いバブル期の建物には贅沢なモノも多いので、損益通算繰越制度の復活と売却により資金ショートした部分を補填する住宅ローンが充実すれば、中古市場に良質な不動産が適正な価格で流通します(現在は新築住宅が安価で供給されている為、中古住宅に割安感がありません)。ようは、新築物件とのすみ分けをはかりながら眠っていた不動産を再生させるわけです。
 駆け足となり、説明不足の点も多かったと思いますし、話が断片的で一部当てはまらない部分もあったと思いますが、無駄な議論ではありません。もし実現すれば不動産取引を円滑にするきっかけになることは間違いないと思います。但し、安心して不動産を購入出来る社会環境作り、すなわちセーフティネットの整備が待たれます。小手先の減税ではなく、実態に即した法整備を急いでもらいたいものです。
 それでは、来年も皆様にとって最良の年となることを祈念し結びとさせて頂きます。
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