2014年11月 vol.157
2014年11月10日
燃えるような赤や黄のコントラスト。山から街路樹へと紅葉のリレーが始まりました。秋の行楽シーズン、皆様はどんな景色を目に焼き付けたでしょうか。
さて、ここのところ株価は乱高下し、急激な円安と消費増税後の消費の落ち込み。日銀は援護射撃するような形で追加緩和に踏み切りましたが、果たして首相による消費税10%の判断は下されるのでしょうか?よく引き合いに出されるのが、増税後の落ち込みは政策でカバーできても、増税を先送りすることによる国の信用失墜の方が極めてリスクが高いということです。将来を考えればこれ以上の先送りは許されないと思いますが、皆様はどうお考えでしょうか?仮に賃金が上がるのを待つと言ってもそんな保証はどこにもありません。大企業は賃金アップを先導していますが、日本のほとんどは中小零細企業です。当面は物価上昇が先行するのはやむを得ないかもしれません。
話は変わりますが、最近よく労働問題について耳にします。パワハラやマタハラなどが社会問題になりつつありますが、少々マスコミも偏った報道をし過ぎなのではないかとも思えます。実は働きながらにしての内部告発も多く、大企業ほど労務管理は頭の痛い問題なのです。私ども住宅関連産業の中には猛烈に働くことを企業文化にしてきた会社も少なくありませんでした。しかしながら、こうして成長してきた会社でさえ変化が求められるようになり、弊害としてデキる営業マンが少なくなった印象さえ受けます。現代は、戦後猛烈に働き復興を成し遂げた時代とは少々異なるようですが、そもそも日本人は勤勉で真面目、組織では協調性を重んじ従順です。日本の労働環境は先進国の中でも劣悪と言われているようですが、日本人は農耕民族であり、汗を流して一生懸命働くことが美徳とされていたと私は思っております。例えば、戦後しばらくまで続いた丁稚奉公の考え方などは、良くも悪くも未だに日本の企業文化の中に根付いていると思います。ところが、昨今の労働環境の変化は、社会が豊かになり従来の価値観が馴染まなくなった表れなのかもしれません。
ブラック企業としてやり玉にされてしまった感がある某大手居酒屋チェーンの会社理念は次の通りだったそうです。「24時間365日死ぬまで働け」ブラック問題を受け、倫理上取り下げたようですが、オーナー経営者なんていうのは、こうやってのし上がってきた人間がほとんどではないでしょうか。これは、頑張れば報われるというメッセージでもある反面、解釈によってはオーナーの価値観を強要され、オーナーの欲望のために酷使されたととられても仕方がありません。要はどこに労使間の信頼関係があるかだと思います。最近の労働問題では、個人の適応不足や能力不足を棚に上げ、労力の使い方を間違っているのではないかという事例も少なくありません。もちろん、上司との相性や企業理念とのギャップにより、運命を左右されることもあるかもしれません。それにしても、いつの間にか仕事そっちぬけで訴訟を目的に社内での一部始終を克明に記録するなど、そのくらいの権利意識があるのならば、プライドを持って仕事で見返せと言いたいものです。ブラック企業とマスコミがあおりますが、実はツイッターなどの第三者の評価は予想以上に冷静であったりします。その点においては、まだまだ日本人の正義感が損なわれていないことに少し安堵しました。丁稚というと時代錯誤かもしれませんが、本人に目的や上昇志向があるとしたら少々の環境でも耐えられるのではないかと思うのです。私の知人で飲食店の経営者がいます。板前さんを早く一人前にしたいとの一心で、合意のもと市場への買い出しに同行させたり、休憩時間を利用し仕込みの練習をさせていたところ、退職後それらの時間について時間外労働の請求が届いたそうです。互いの利害が一致しているうちは問題ありませんが、いざとなれば労使は全く相容れぬ関係となってしまいます。全ては信頼関係の上に成り立っているということを使用側も労働側も肝に銘じなければなりません。