2015年8月 vol.166

2015年08月10日

 全国でうだるような暑さが続いております。各地で記録的猛暑が観測され、正に灼熱と呼ぶにふさわしい夏となりました。仙台も例外ではありません。8月に入り観測史上初となる4日連続の猛暑日を記録しました。雨のジンクスのある仙台七夕まつりは、前日までの快晴から一転、最終日には少しだけ雨に見舞われましたが恵みの雨とまではいかなかったようです。


 今回は、不動産の市場動向について参考になる資料を入手しましたので、私の主観を交えて報告したいと思います。資料は、宮城県不動産鑑定士協会が東日本大震災発生以降の不動産市場の推移に関する実感と予測等を県内の宅建業者を対象にアンケート調査を実施し「動向指数」をまとめたものです。調査結果は項目やエリア別にグラフと解説が付いたものですが、ここでは仙台圏の動向を中心に説明させて頂きます。尚、調査概要については、「大きく上昇・やや上昇・横ばい・やや下落・大きく下落」の選択肢から回答を集計し動向指数(DI)を算出したものです。
 

 対象となる・住宅地の価格、・商業地の価格、・中古住宅の価格、・中古マンションの価格のうち、動向指数のピークは平成25年6月時点、・商業地については平成26年6月時点をピークに下降傾向にあります。更に各項目の解説を要約します。
① 住宅地:「平成26年6月調査時点を頂点として低下傾向が続いた。こうした中、仙台市及び人口の増加傾向にある富谷町、大和町、利府町等の内陸北部において引き続きプラス圏を維持し住宅価格の継続的上昇が認識されている。」
② 商業地:「県内平均は前回調査から微増。仙台市は高水準で推移している。仙台市においては、投資用不動産、マンション用地に対する需要の増加傾向が続き、不動産投資法人や業績堅調の地元企業を中心とした需要の他、相続増税を契機に個人の不動産投資への関心が高まっている。また、半年後の予測も上昇の継続が見込まれる。」
③ 中古住宅の価格:「仙台市では、プラス圏を維持しているものの大幅な減少となっており、エンドユーザーの取得意欲は底堅いが、震災以降続いた住宅の価格水準は上限に達しているとの見方も強い。」
④ 中古マンションの価格:「仙台市においては引き続き高い水準にあり、建築費高騰や地価上昇により新築マンションの供給が停滞していることもあり、需要が中古マンション市場に流入したと見られる。震災以降急激な上昇が続いたため、中古マンションの価格はピークに達したと見られ、今年度以降新築マンションの供給量が回復することもあり、今後の価格下落が予測される。」
住居系賃貸市場についてはどうでしょうか?賃料DIのピークは平成24年6月調査時点で、平成25年6月に一旦上昇を示しましたが、その後マイナスに転じています。解説は次の通りです。「被災地域周辺においては、災害公営住宅の完成や民間賃貸住宅の新規供給が進み、今年度は仮設住宅からの退去がピークを迎えるものと見られ、それに伴う空室の増加から家賃の下落傾向が続くとの意見が大勢を占めている。特に各エリア郊外部の築古物件を中心に空室が目立つようになっている。」その公営住宅の進捗状況については次のような結果となっています。平成26年度の供給量が5289戸(進捗率33.1%)、平成27年度には約倍の累計10973戸(進捗率68.6%)の供給が予定されております。加えて集団移転等に関連する住宅地供給も今年度中に予定の52.7%が供給される見通しであり、公営住宅への移転と合わせ仮設住宅及び民間のみなし仮設住宅から移転する計算となります。これにより賃貸市場も大きく影響を受けるものと考えられます。


 何れの分野においても復興が進むにつれ、需給関係の変化が見られます。特に不動産売買は、取引事例を参考にした比準価格により価格決定されることが多く、市場に流通している物件の多くに高値が付けられています。現状価格での成約が鈍りはじめ更なる需給関係の変化が見られたとき、市場は調整局面に突入するものと考えられます。地価公示、路線価、地価調査は過去の結果であることにご留意頂きたいと思います。