2015年10月 vol.168
2015年10月10日
朝晩の冷え込みと各地から届く紅葉の便りに秋の訪れを感じる今日この頃です。
さて、先月から1ヶ月の間に日本国内を様々なニュースが駆け巡りました。安保法案の強行採決も記憶に新しいところですが、後に関東・東北豪雨と名付けられた大災害は衝撃的でありました。東日本大震災から早いもので4年半が経過しましたが、今回の豪雨災害のライブ映像と東日本大震災の記憶を重ねあわせた方も多かったのではないでしょうか。
宮城県では、その東日本大震災から5年をむかえる来年にも借り上げ住宅の打ち切りが予定されており、これから来年にかけて賃貸市場も大きく動くものと考えられます。これまで家賃の負担が軽減されていたものが、今後正常な負担を求められるわけですから生活スタイルの方向転換は必至と言えます。しかし、既に自力での生活再建を果たしておられる方々も多いことと、生活支援に多額の税金が投入されていることを考えれば、借上げ打ち切りは当然の判断と評価すべきでしょう。こうした中、仮設住宅からの移転を支援する団体が入居者リストを片手に奔走しているようです。保証人がいない、無職、高齢者等、皆さんハードルの高い方々ばかりです。中にはペットを何匹も飼育されているような世帯もあり、協力はしたいものの一般の賃貸住宅での受け入れは困難な上に、こうなることが想定されていたにもかかわらず自業自得と言わざるを得ない事例も少なくありません。
話は変わりますが、先日、住宅ジャーナリストのコラムを読んで感じたことを述べます。都内では、都心5区のマンションを中心に分譲価格ではバブル期越えの物件が数多く供給され、即完状態が続いているとの報道は皆様も耳にしたことがあると思います。一部には東京五輪後も価格が高値で推移するのではないかとの憶測も飛び交っております。その根拠として、東京の地価や賃料水準が世界の他の大都市に比べまだまだ低水準にあり、伸び白があると評価されていることが挙げられます。また、今後マンション用地に相応しいまとまった敷地の確保が難しく、好立地でのマンション供給が先細りするとの見方が大勢を占めています。背景には、企業の業績回復や学校の都心回帰等で一団の土地のリストラも終息傾向にあることが伺えます。更には、今年1月に改正された事実上の相続増税により、富裕層を中心に現金を不動産に換える動きがトレンドとなり、需要をけん引していることも少なからず影響しているものと考えられます。相続時におけるマンション評価は、低層階の中部屋でも上層階の角部屋でも同額の為、特に条件の良い部屋ほど実際の相場や価値との乖離による資産圧縮効果が得られるということになります。地価と建設費の高騰を反映した販売価格を吸収するくらいの需要の厚さが首都東京のポテンシャルの高さを物語っていると言えます。
仙台市内はどうでしょうか?こちらも例外ではなくバブル期越えを記録しています。しかし、市場の先行きを不安視する声も聞こえてきます。確かに、都内と異なりアッパー層の需要というか数には限界があります。これまで市場をけん引してきたのが、震災バブルに乗った方々と確実な世帯収入を得ているダブルインカム組、更には地方や他県の富裕層だったと言っても過言ではありません。実需ならともかく、投資物件としては既に投資に見合うリターンを生みだすには難しい相場になりつつあります。仙台のような地方都市の場合、企業の賃料負担の査定は低く、さほど家賃が伸びない現実があります。新築市場がけん引した中古市場の底堅い相場も、今後の新築価格動向次第では、崩壊する要素を含んでおり、そういう意味においても新築マンションのマーケットから今後も目が離せません。もちろん、不動産市場全体も同じ見方をして間違いはないと思います。