2016年4月 vol.174
2016年04月10日
日増しに暖かさが増し、桜前線の北上とともにようやく東北にも春がやってきました。皆様も思い思いにお花見を楽しまれたことと拝察します。
はじめに、先日公表された公示地価についてですが、地元紙には「仙台一強」の文字が躍りました。仙台市においては全用途の地価が上昇又は横ばいとなり、ここ1、2年の実勢価格を踏まえれば予想通りの結果に落ち着いたと言えます。しかし、東日本大震災の復興特需で前回まで上昇を示した沿岸部等の多くのエリアでは震災前の状況に戻りつつあるようです。次に今夏公表される仙台市内の路線価についてですが、こちらも公示地価がベースに形成されるため、多くの地点で上昇を示すものと考えられますが、秋口の地価調査価格については、若干の調整が入るのではないかと推察されます。これは、仙台圏に限ったことではありません。報道などによれば、都市部のマンションや住宅価格が地価の上昇に伴い高値を更新する中、ここにきてどうも息切れし始めている様子が窺えます。昨今の新価格に消費者がついて行けないという表現が首都圏からも聞こえ始めてきたのです。昨年末あたりから景気もパッとしなくなった印象を受けますが、かと言って急激に地価が下がることは考えがたい点もあります。例えば、バブル期の異常は別にしても、失われた20年もの間国内の不動産はほぼ右肩下がりで下降線をたどってきたのに対し、ここ2、3年の景気を背景に地価は上昇に転じたばかりで、20年の歳月とアベノミクスの2、3年の月日、いわゆる上げと下げの期間のみを単純比較すれば、そう極端には下がらないのではないかとの見方もあります。今後の地価動向は引き続き注視する必要があります。
さて、新年度に入り税制や制度も一部で改正が見られます。不動産関連では、空家を売却した際の譲渡益に対し3000万円控除が可能になりました。これには、国による空家の問題改善とこれに伴う有効活用促進への思惑が窺えます。日本中の空家は実に800万戸以上(但し、賃貸やセカンドハウス、販売用不動産なども含まれますので実際にはこの半分くらいなのでしょうか)と言われており、昨今、長年放置された空家が廃墟と化し、治安や美観にも悪影響を及ぼすなど社会問題化しつつあります。この背景には、固定資産税の軽減を受ける目的で古くなった空家を故意に放置したり、解体費の支出を捻出できず長年放置された結果、いつの間にか所有者の相続や転居等により実態すら把握できなくなった案件も多数あるようです。
昨年5月には空家対策推進法が施行され、これに基づき多くの自治体が事態改善に乗り出しております。こうした空家の多くは時代背景上、取得費が不明だったり、極端に低いことが多い為、譲渡時には必ずと言ってよいほど譲渡益が発生し譲渡税の負担は避けられません。今回の税改正では、自己の住居や被相続人が所有していた住居に相続人が同居していた場合の居住用財産の3000万円控除と同様に、譲渡益から3000万円を控除できるようになりました。但し、適用要件として、被相続人が亡くなられた時点で一人暮らしであったこと。昭和56年5月31日以前に建築された建物及びその敷地であること。相続から譲渡までの間事業の用に供していないことなどが挙げられます。果たしてこれがどの程度空家対策に寄与するかは疑問も残りますが、国が示した対策の第一歩としては評価すべきでしょう。私どもが業務上常々感じることですが、事実上の所有者は売却を希望しているにも関わらず、相続登記が完了していないことが障害になっていて取引が成立しない例が少なくありません。何らかの理由で相続登記を行わなかったがゆえに、世代交代が進み、遡っての手続きが困難なケースが多々あります。先日も40年越しで相続登記を完了させたという事案に携わりましたが、税金が安くなるというのは補助的動機付けに過ぎず、肝心なのは相続人間での争い事がないことが一番です。補足しますが、居住用財産の3000万円控除はご存じのとおり住まなくなって3年が経過した年の12月31日までの譲渡が対象となります。意外に知られていないのが東日本大震災によって被災滅失した家屋の敷地を手放すようなケースについてです。この場合は、災害発生の日から7年目の属する年の12月31日までの譲渡が適用となりますので、心当たりのある方は是非ご相談下さい。