2017年7月 vol.189
2017年07月10日
東北地方では空梅雨の様相さえうかがえる日が続いておりますが、九州地方では、先ごろの福岡、大分を襲った集中豪雨により甚大な被害を記録しました。被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
先の東京都議会選挙での自民党惨敗の結果を受け、その余波は国政にも広がり始めております。実感はありませんが、アベノミクスによる景気拡大が戦後3番目を記録したそうです。私のような一市民は、政治の混乱が景気回復のブレーキにならないことを願うばかりです。
さて、7月3日には2017年度の路線価が発表され、宮城の上昇率が全国1位を記録しました。また、全国的には銀座鳩居堂前がバブル期に記録した最高額を更新、1?4032万円の評価となりました。前述の景気回復もそうですが、地価においても疲弊が目立つ地方と、インバウンド需要等の恩恵を受けた大都市圏との二極化が鮮明に表れた形となりました。経済面における格差や二極化は今後も避けられぬ問題であり、一部の先進国が経済優先から別の価値観や豊かさを求め方向転換しつつあるのも、資本主義における成長の限界に直面しているからに違いありません。
人口減少や社会構造の変化に伴い都市が衰退するのは日本に限ったことではありません。各国でも様々な研究が行われ、人口減少が住宅市場に与える影響が立証されています。国内の某研究機関によれば、2015年の住宅地価を100とした場合、2040年には多くの地域において地価が半分から3分の1程度まで暴落するとの研究結果が示されました。もちろん、全ての地域がそうなるわけではありませんが、我が国の少子高齢化という社会構造が日本全体の平均値を押し下げる結果になっていることに今さら解説を挟む必要はありません。
地方が抱える大都市圏との格差という点においては、今後も中々改善し難い問題が残ると考えられますが、一方の大都市圏にも次のような問題があると思われます。あるシンクタンクの調査によれば、実は住宅の空家率が一番低い都道府県は宮城県の9.4%なのです。一方、最も高いのは山梨県の22%となるそうです。数字だけでは、木を見て森を見ずになってしまいますので、その理由について検証するとそこには頷ける理由がありました。宮城県は、東日本大震災による特需が空家率の低下に大きく貢献、山梨県では別荘の多さが空家率を大きく上昇させていることが分かりました。今や全国の空家は820万戸、実に8軒に1軒が空家と言われていますが、その中にはセカンドハウスや別荘、建売住宅等の完成在庫なども含まれていますので、数字の独り歩きに悲観しないで頂きたいと思います。ここで何を申し上げたいかと言うと、人気が高く当面は人口増加が見込める地域には今後も大量に住宅が供給され、これに伴い空家率も上昇するでしょう。逆に住宅需要が見込めない地域にはそもそも住宅の供給が抑制され需給関係が意外にも保たれることでしょう。よって、人口増加率と空家率は必ずしも相関関係にあるとは限らないと言えます。結局は、どの分野においてもそうですが、全ては需給バランスであると言うことです。
今後の地価の動向や空家率の上昇は、大変気になる点ではありますが、現在は人気エリアであっても空家率が上昇すれば、資産価値にも影響を及ぼしかねないという点に注意が必要です。参考までに、一般財団法人ゆうちょ財団の「くらしと生活設計に関する調査」によると、現在の持ち家の3年後の資産価値について、実に36.5%の方々が下がると回答しています。一方、上がるとの回答は1.7%にとどまりました。つまりは、持ち家や不動産に関し悲観的な考えをお持ちの方が多いことを表した結果と言えます。
最後に、路線価は相続税や贈与税を評価する為、国が一方的に評価しているものです。通常、路線価は実勢価格の8割程度に設定されていますが、好景気時には路線価の倍以上で取引されることも珍しくありません。あまり一喜一憂しないよう目安としてご活用下さい。