2018年6月 vol.200
2018年06月10日
日本列島も灰色の雲に覆われ、ほとんどの地域で梅雨入りとなりました。今年はゲリラ豪雨などの急激な天候の変化に注意が必要とのことです。加えて、この時期は季節の変わり目でもありますので体調管理にも十分にご注意下さい。
さて、「気宇壮大」も今回が記念すべき200号目となりました。これもひとえに皆様のご協力の賜物と心より感謝申し上げます。どこまで続けられるか分かりませんが、継続は力なりで今後も執筆活動を続けて参りたいと思います。
5月は当社の決算月でもあり先日第44期を無事終了致しました。おかげ様で増収増益は確実の見込みではありますが、これは私どもの努力というよりは、戦後二番目といわれる景気拡大など外部環境の恩恵が大きかったと思っております。一方、過熱する不動産市場を背景に賃貸市場では過剰供給が囁かれ急激な環境変化が起こり始めております。今期も皆様の大切な資産を守る為、社員一同課題と向き合い、家主様と寄り添いながらこれまで以上のフォロー体制を確立して参る所存でございます。
今回は、本業である不動産関連の話題に触れておきたいと思います。地価公示価格はほとんどの地点で上昇又は下げ止まりを示し、不動産市場も活況のように思われがちです。しかし、相場の世界では、一般消費者にまで高値が浸透し、これに乗り遅れないようにとのムードが行き渡るころには、ほとんどの場合ピークアウトをむかえているものです。飛行機の胴体を相場に例えるなら、「離陸時は機首から上昇するが着陸時は機尾から着地する」機首が都市部や大企業なら、機尾とは地方や一般消費者を指すことになります。不動産市場は東京オリンピックまでの先高観を背景に上昇を続けて参りましたが、そろそろ息切れというか踊り場に入りつつあるのかもしれません。バブル崩壊のきっかけとなった総量規制のようなことは無いでしょうが、昨年あたりから日銀や金融庁が銀行に対するアパートの貸出残高に警鐘を鳴らし始めていた矢先のこと。シェアハウス運営会社の相次ぐ経営破たんと地方銀行の優等生とも呼ばれたS銀行の不適切融資問題は、図らずも不動産市場に少しばかり重たい空気をもたらしたことは間違いありません。
ここではデータ上の話は無視しますが、カネ余りが不動産市場に流れ込み都市部では投機目的の売買も繰り返されてきました。また、大量に供給された物件の多くは賃貸に回され、高騰する土地と建築費から逆算し割高な賃料設定が行われています。その結果、好立地にも関わらず借り手が付かないという現象が起き始めているのです。こうした傾向は、投資対象となった都市部になるほど顕著で、特に地方都市ほど賃料と需要の限界を露呈したように思えます。
私は経済評論家ではありませんので将来をズバリ的中させることはできません。いくつかのシナリオの一つとして次のようなスパイラルを考えます。メガバンクの人員シフトには世間に衝撃が走ったばかりですが、地方銀行にとっても収益力の低下は死活問題です。企業の資金需要の先細り、住宅ローンの金利競争、アパートローンの引き締めなど貸出先が狭まれば、その資金は、相場が安定し担保できる不動産事業に一層資金が集まりはしないでしょうか?現状では、我々不動産業者も物件の獲得に躍起になっています。底堅い需要を指をくわえて静観する手はありません。物件の争奪戦の末、高値掴みした物件に利益が転嫁され商品化されます。「物件が無い」の根本は正にここに原因があります。好循環が続くうちは良いのですが、次第に商品回転率が鈍り、そこに価格崩壊という暗雲が漂い始めると利益の圧縮はもとより損切をしての売却を余儀なくされます。すなわち、体力のないところには市場からの撤退が待ち受けています。奇しくもバブル期の末期症状に酷似しているかのようです。それでは、そのクラッシュするタイミングとはいつなのでしょうか?オリンピックまでは大丈夫との楽観論は捨てた方が良いかもしれません。もちろん私も警戒感を持って取り組んでおります。