2019年6月 vol.211
2019年06月10日
初夏に相応しい晴天が続き、新緑に囲まれ一年でもっとも過ごしやすい季節を迎えました。が、それもつかの間、執筆の途中で東北南部に梅雨入りの知らせが届きました。仙台では平年より5日早い梅雨入りだそうです。ところで、史上初の10連休となった先のゴールデンウィークはいかがでしたでしょうか?私も初めてコラムをお休みさせて頂きましたが、連休後半は暇を持て余す結果となりました。果たして連休による経済効果はあったのでしょうか?
さて、海の向こうでは米中の貿易摩擦が激化しつつあります。私自身、今年前半に米中関係はどこかで手打ちされるであろうと楽観視しておりましたし、それを公言していただけに少々恥ずかしい思いでおります。そんな最中、上場企業の決算発表もピークを迎えました。決算は言うまでも無く1年間の結果ですので景気減速を直ちに反映すものではありませんが、実際の足元経済はどうもおぼつかないようです。日銀の短観が示す通り景況感は実に6年3ヶ月ぶりの大幅悪化と景気拡大の終わりを告げるものでもありました。
特に不動産業界は3月年度末での在庫処分や消費増税の若干の駆け込み需要などの反動減なのか、4月の落ち込みは激しかったような気がします。加えて、休んでおいて文句をつけるのも何ですが、GW10連休が市場には冷や水となったようにも思えます。これが一過性の落ち込みなら良いのですが、少々消費マインドが低下しているような気がしております。もっと深掘りをするならば、昨今の好況で将来の需要まで先食いした感も否めませんし、高騰した都市部のマンション価格などは既に一般サラリーマンの手の届かない水準に達しております。この調整局面とも言うべき最中、高値で売り抜けたい売り手側と相場の変化を静観する買い手側との間で膠着状態が続く可能性もあります。セオリー通りに考えれば、新築よりも先に値を下げると言われる中古市場の取引量や価格変化をより注視する必要がありそうです。個人的には、新築と競合する価格帯の中古住宅や中古マンションは苦戦、面積の大きい土地もアパート建築需要などの変化に伴い弱含み、総額が大きくならない住宅用地に限りもう少し高値水準で推移するものと考えております。住宅用地が高値をキープできるのは、ここ数年の好況により土地の争奪戦が続いたため、多くの土地が他の用途に回り一般消費者に行き渡らなかった分、潜在需要が続くと思われるからです。加えて住宅系は一括査定サイトによる売却判断が主流になりつつあるため、不動産各社が競合を意識するがゆえ高値での査定を出すあまり、まだまだ高値で市場に流通することが多いのです。その先は前述の需給関係により明暗が分かれます。
ご記憶の方は少ないと思いますが、東京オリンピック開催決定に際し、近年の開催国の実態をお話したことがあります。オリンピック開催の前年には関連特需も終わり景気が減速するとのデータが示されているのです。そう知りつつ私もオリンピックまでは大丈夫だろうという根拠なき希望的観測で楽観視しておりましたが、他国の例に漏れず景気減速が現実味を帯びてきました。果たして消費増税はあるのでしょうか?少なくとも前回の消費増税見送り時点よりも経済環境は悪化しているはずです。追い打ちをかけるかのように、金融庁は「老後2000万円必要」なる試算を報告し各方面に波紋が広がっています。なぜこのタイミングなのか?国民の財布のひもを締める形にならなければ良いのですが。
かつて我が国には土地神話なるものがあり、土地は右肩上がりに上昇を続けるものと考えられておりました。バブル崩壊を経験し、その後の経済は混迷を極め失われた20年とも30年とも揶揄されました。実は急速な経済成長を遂げた中国にも同様の考えがあり、中国国内の不動産市場は値上げ期待により下支えされてきたと言っても過言ではありません。これが万一下落に転じるようなことがあれば、そのインパクトはあまりにも大きく消費マインドの落ち込みは免れません。その影響は中国国内にとどまらず、我が国ひいては世界各国にも飛び火してくると考えるのが当然でしょう。山高ければ谷深しで、異次元の金融緩和が続く我が国ではいざ景気が落ち込めば、これ以上打つ手がない状況とも言えます。混沌とする世界情勢の中、来る大阪サミットでどのような意見が交わされるのか注目されます。