2019年7月 vol.212
2019年07月10日
平成最悪の豪雨災害をもたらした西日本豪雨から1年を迎えました。そして、今年も各地で豪雨被害の報道を耳目にします。長い梅雨が続き急激な気候の変化などもございますので、安全と体調管理には十分にご注意下さい。
さて、今年も土地の路線価が発表されました。この春の公示地価の上昇に連動し全国の標準宅地は4年連続の上昇となりました。また、宮城県内の上昇率は4.4%と昨年同様全国3位を記録しました。秋田市駅前通りでは27年ぶりに上昇に転じた地点もあり、好況に沸いた不動産取引の余波が地方にも波及したことを示した結果となりました。世界的なスキーリゾート地として近年脚光を浴びている北海道ニセコ高原は5年連続の上昇、路線価トップの銀座鳩居堂前は3年連続の最高値更新となりました。この象徴的な二地点にも共通しますが、地価上昇トレンドは再開発やインバウンド効果、ホテル・商業・オフィス需要が目立ちます。我が仙台は全国主要都市の中でも唯一インバウンド効果が乏しい都市でありますが、最近では台湾直行便就航の恩恵もあってのことか、以前よりアジア系の人々を見かける機会が増えました。しかし、他の主要都市に比べ欧米系の観光客が皆無に等しい状況で、世界的知名度の低さや観光資源の乏しさを痛感するところです。こうした実状を鑑みますと仙台の地価上昇は地下鉄東西線と区画整理などの再開発の産物とも言えます。インバウンドが地域経済に与える影響が大きい昨今において、このあたりの掘り起こしが都市としての更なる飛躍のカギになるのではないでしょうか。
話しは前後しますが、昨年後半あたりからの市況を勘案すると、地価は早ければ来春の地価公示あたりからマイナスに振れる地点が多くなるのではないでしょうか。変化する市場をしり目に報道では地価公示上昇、路線価上昇と活字が躍ります。当然のことながら不動産売却をお考えの方は強気になるのも頷けますが、明らかに需給関係はこれまでの売り手市場から暗転しつつあります。これは消費増税前の駆け込みによる反動減などの一過性のものなのでしょうか?私は、この数年の景気拡大と低金利によって当面の需要の先食いがおこったこと、高騰する価格に一般消費者の所得が追い付かなくなったことが大きな要因のような気がします。聞くところでは、分譲マンションの成約率が落ち込み、建売住宅など住宅関連の在庫が目立ち始めています。販売の減速はこれまで旺盛だった不動産各社の仕入れにも影響を及ぼします。更に不動産プロジェクトに対しても金融機関の姿勢が硬化している印象を受けます。これもこの先の市場を憂慮しての判断と考えるべきでしょう。
このような市場の変化は、これから住宅を取得される方にはチャンスとも言えます。私も長い間住宅の販売に携わって参りましたが、消費者にとって住宅は高い買い物ですのでお悩みになるのも当然です。強い衝動に駆られてというと大げさですが、その位の勢いがないと決断もできません。特に経済の先行きが不透明な中、住宅ローンという大きな借り入れに不安を抱く方も多いと思います。その際は、不動産を負債と資産のバランスシートに置き換えてお考え頂いたらいかがでしょうか?住宅ローンというと負債のイメージが先行しがちですが、一方で資産に不動産が加わることにもなるのです。特に近年は住宅性能が格段に向上し中古市場での価値も見直されてきましたので、例えば10年後、20年後、30年後という節目を設定し、その時点における借入残高と資産の目減りをある程度想定しておけばプレッシャーからも少しは解放されるはずです。その間に退職金やその他の臨時収入など当てはめながら計画を立てます。もちろん、未来の予測は困難ですし全てが計画通り行くとは限りませんが、不動産は相場の世界です。相場の山谷はありますが、市場価格と借入残高との差額によっては売却時にキャッシュを生み出すことも可能になります。仮に税務上譲渡益が生じたとしても住宅用不動産であれば3000万円控除も受けられますので、その利益内であれば非課税となります。先ごろも「老後2000万円」発言で国会が紛糾するなど、国民の不安を煽るような問題が露呈されたばかりです。こうした時代だからこそ不動産を上手に活用しいざという時のために備えたいものです。