2019年9月 vol.214
2019年09月10日
9月に入り朝晩の涼しさに少しずつ秋の気配を感じるこの頃です。今月6日で震度7を観測した北海道地震から1年が経過しました。そして、今も各地で台風やゲリラ豪雨などの被害が報告されております。被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
さて、株価は乱高下を繰り返し、世界経済の不安定さを露呈しているかのような昨今です。国内では10月から消費税増税が控えているわけですが、今後の経済への影響はどうなのでしょうか?不動産業界的には、前回の消費税8%への増税時ほど駆け込み需要を取り込めなかった印象を受けます。これは物件不足により潜在的需要を掘り起こせなかったことや、物件価格の高止まりにより消費者の所得が追い付かず今ひとつ消費喚起できていないことなどが理由として挙げられます。また、増税後のローン減税の拡充などの施策が早くからアナウンスされていたため、消費者が必要に迫られていないことも要因のひとつだと思われます。加えて、高騰した市場がイケイケムードから調整局面へと変化する状況を消費者がシビアに分析し、高値掴みしたくないという心理が働いた結果とも言えそうです。そのため、現行税率のタイムリミット(建物請負契約)となった3月は、年度末ということもあり、供給側の在庫調整など、増税とは別の理由により一時的に建売住宅などの需要が盛り上がった程度に過ぎませんでした。実はその反動もあってか、市場は5月、6月と低調に推移し、7月くらいから上期の駆け込み需要による若干の回復が見られた程度です。
消費税について土地取引は非課税となりますが、建物増税での影響は不可避と思われます。個人間の一般仲介においては殆どの場合非課税で、建売住宅や分譲マンションの場合においても内税方式を取っているため、10月以降販売価格が据え置かれた物件においては、事実上の値下げであり売主側が増税分を負担すると解釈できます。一方、新規供給分は増税分が販売価格に転嫁されることになりますので、今後業界にはボディブローのように効いてくるのではないでしょうか。そして何よりも、増税後の世の中全体のムードが心配です。
もう少し掘り下げて住宅市場のお話をしたいと思います。首都圏の分譲マンションの販売に陰りが見えてきたということは報道などでも公表されておりますので、皆様周知の事実と思われます。仙台市内も例外ではありません。これまでの分譲価格の高騰により、中古市場の価格も連動するように上昇しました。ここ何年かは、築10年前後の中古マンションで分譲当時の価格以上のプライスが付けられ、実際に成約に至るケースも珍しくありませんでした。しかし、ここにきて一部の新築物件が値引きでの対応を始めたため、昨年後半あたりから価格帯で新築に肉薄する高額帯の中古マンションに割高感が生じ、動きが鈍りつつあります。具体的な価格帯で言うと3000万円台後半からその傾向が顕著に表れ始めております。もう一段階下の価格帯2000万円台の物件が本来はボリュームゾーンであるはずですが、築年数や設備、仕様又は程度などで価格に対し見劣りする物件が多く、消費者の期待値とのギャップを感じます。この辺が相場全体が底上げされた影響と言えます。一方で、更に下のレンジやリノベーション物件などに消費者が流れる傾向が強いと感じます。また、仙台の場合、あすと長町などに大規模新築マンションの供給が多く、市内中心部を諦めたファミリー層の受け皿になりつつあるため、幅広いエリアから購入層を集めている印象を受けます。それにしても、これまで供給量が少なかったエリアに相当規模の新規供給がなされたことにより、周辺の賃貸マンションや分譲住宅、中古物件にまで少なからず影響をもたらしているものと考えられますし、更なる市場の変化は必至とも言えます。
賃貸市場でも同様のことが言えます。これまで供給量の少なかった仙台駅東口や地下鉄東西線エリア、更にはあすと長町・富沢エリアにも大量の賃貸住宅が供給されたため、エリア内での競合はもちろんのこと、広範囲に影響が及んでおります。特に震災後に供給された賃料水準の高い物件で空室が目立ちはじめており、需給関係にも影を落としています。