2019年10月 vol.215

2019年10月10日

  実りの秋を迎えましたが10月らしからぬ暑い日が続いております。これも異常気象のせいでしょうか、テレビの画面からは連日のように自然災害の脅威が伝えられ、その度に言葉を失います。遠くの地からただただ被災地の一日も早い復旧を願うばかりです。


  さて、10月1日より消費増税が実施されました。初日こそ交通機関などでシステム障害によるトラブルがあったものの、報道を見る限りそれほど大きな混乱は無かったようです。初となる軽減税率の対応を巡っては、コンビニなどでイートイン脱税なる言葉が生まれるほど運用面での課題も浮き彫りとなり、制度の抜け穴に早くも議論が巻き起こっているようです。また、電子決済によるキャッシュバックなどは使い慣れない方々には少々不自由で気の毒のような気がします。

 

  先月末、月末のせいもあってか一部の幹線道路が異常な渋滞を見せていました。あとから振り返って考えると、その渋滞の原因はガソリンスタンドでの給油待ち車両の往来によるものと判明しました。なるほど、これも駆け込み需要ですね。9月の某百貨店の催事では、高額な美術品の成約の多さに一瞬目を疑いました。同作家の催事は3年ぶりとのことでしたが、関係者からは前回と比べ明らかに成約点数が上回ったと伺っております。これこそが富裕層による駆け込み需要と言えます。やはり富裕層こそお金にはシビアなものですね。同じ高額帯のものでも不動産や自動車などは増税後の消費落ち込みへの措置が打ち出されており、前回の5%から8%の時に比べ駆け込みは少なかったと報告されております。私ども不動産業関連業務では、月をまたいでしまった建物付き売買は、事実上は売主である不動産会社が増税分を負担していることになります。当社のコインパーキングやコインランドリーなども今のところ料金据え置きで、事実上身銭を切る形をとっています。何れ、我々不動産業界にとって建築費やテナント賃料などその影響はボディブローのように効いてくるのではないかと懸念されます。たかが2%、されど2%です。住宅ローン控除の期間延長はその増税分の負担軽減と需要の落ち込みを下支えする役目となります。

 

  長期的に見た場合、10%という比較的計算容易な税率により税込み価格を瞬時に計算できるため、消費者の冷静な判断が衝動買いなどを抑制するのではないかとの見方もあります。確かに、高額商品になればなるほど、その傾向は顕著に現れるかもしれません。相変わらず海外情勢も非常に不安定です。先頃、政府は景気判断を悪化と下方修正しました。国内もオリンピック頼みの傾向が強く、三度目の正直となった今回の増税は遅きに失した感を否めません。

 

  少子高齢化により未だかつてないスピードで人口減少が進むと予測される我が国。住宅市場を取り巻く環境は厳しさを増しております。6年後の2025年にはいよいよ団塊の世代の方々が75歳の後期高齢者に突入し、社会保障などのコスト増は待ったなしの状況です。その先2030年までに日本の人口は約1000万人減少するとされております。数字だけではいまひとつピンときませんが、これは東京都の人口に匹敵するほどの数であり、我が仙台市のような100万人都市に換算して実に10都市分に相当します。今回の消費増税は、社会保障や教育無償化の財源の確保との大義のもと施行されたものですが、輸出還付金制度により輸出企業に対し多くの消費税が還付されているとの報道を耳目にします。実際には課税仕入れと輸出による非課税売上との差額により生じた過分に支払った消費税の還付ということですから、正しく理解されていないことが原因と考えられます。それでは、誰も損得はないのではと思われがちですが、どうも問題の本質は下請け企業がコストダウンの強要を受け事実上の負担を強いられ、大企業は国からの輸出戻し税の還付により儲かると誇張され伝えられていることにあるようです。