2020年4月 vol.221
2020年04月10日
残念なワードからスタートしなければなりません。本来であれば、春、満開の桜のもと新たな門出を迎えた新入学生や新社会人が希望に満ちた日々を過ごしている頃なのですが、日本がそして世界が新型コロナウィルスの影響で大変な事態に陥っております。先月のコラムをお届けする頃は、私自身ただの風邪程度の認識でしかありませんでした。希望的観測も含め、ゴールデンウィーク前には事態も収束に向かうだろうと楽観視しておりましたが、収束どころか今や緊急事態宣言が発効されるほどの窮状となっております。世間の話題はコロナ一色です。もううんざりと思いながらも、刻一刻と変化する状況を固唾を飲んで見守る日々が続いております。だからこそ、我々国民は一人一人が責任と自覚をもって、ウィルスという見えない敵に忍耐強く向き合い日常の生活を取り戻さなければなりません。
さて、当社の日常業務では、既に飲食店などから賃料減額交渉が複数寄せられ対応に追われております。業種業態によっては企業努力にも限界があり、真っ先に固定費の削減に取り組むのは理解できなくありません。一方で、この窮状に便乗するかのように取りあえず交渉という向きには承服しかねる点もございますし、企業姿勢を疑わざるを得ません。他に住宅関連では、人事異動の見送りによる社宅契約の急なキャンセルも何例か報告を受けております。3月中旬以降賃貸の問い合わせも例年に比べ少ない印象を受けておりますし、売買についても年度末の駆け込みなどはかなり少なかった印象です。特に今後の先行きを懸念してか、ここにきてレインズ(不動産業者間の流通情報システム)の登録量が急増し在庫処分を急ぐ動きが顕著に表れています。更に身近なところでは、外出自粛の影響を受けてか、時間貸し駐車場の売り上げにも影響が出始めております。
それでも我々不動産業は短期的には、外食や観光業など多くのサービス業ほどの打撃は受けておりません。よって、急速に地価が落ちることは考え難いのですが、この事態が長期化すればするほど、最後にしわ寄せを受け一番回復が遅れるのも建設不動産の特徴と言えます。また、コロナ対策の一環として大企業を中心に広がっているテレワークは、働き方の根本を変えるきっかけになる可能性も含んでおります。平時に戻った際にテレワークなどの新しい働き方が定着するようであれば、オフィス需要にも少なからず影響を与えることになるでしょうし、対面接客の機会をセーブするという点においては別の側面も考えられます。例えば、不動産業界におけるIoTやAIを駆使した不動産テック化が急速に進み、業務の効率化と手続きの簡素化や利便性の向上、ひいてはお客様サービスの向上が加速し、新たなビジネスモデルの創出とともに業界の勢力図が変わる可能性さえあります。
さて、話を移しますが、今回は3月に公表された公示地価と今後の気になる動向について考えてみたいと思います。今年も宮城県内の報道では「上昇率全国2位」などの見出しが躍りました。仙台市では平均変動率が8年連続の上昇、周辺市町村においても7年連続の上昇となりました。一方、その他の市町村では5年連続の下落となり、依然として明暗が分かれた格好です。興味深いのは、商業地において仙台市と周辺市町村ともに上昇率が前年よりも拡大している点です。実務上にも言えることですが、ここ1、2年は今がピークと言われながらも、商業エリアのしかも希少性の高い物件では引き続き高値での取引が続いており、これらの結果が色濃く反映されたものと考えられます。また、住宅地で9年連続最高価格地を記録した青葉区錦町エリアでは富裕層の支持が根強く、引き続き上杉・錦町エリアのブランド信仰を象徴する結果となりました。
全国的には、住宅地が3年連続の上昇、商業地は5年連続の上昇となりました。三大都市圏の上昇率の拡大とともに札仙広福なる地方4都市の上昇率が住宅地、商業地ともに三大都市圏を上回る上昇率を示しました。地価公示は国交省土地鑑定委員会が毎年1回標準地の正常な価格を公示し、一般の土地取引価格に対し指標を与えることで適正な地価の形成に寄与する目的で定められております。毎年7月に公表される路線価は、地価公示がベースとなっており、おおよそその8割程度に設定されています。これらのデータはリアルタイムではありませんので実勢価格とのタイムラグが生じます。結論ですが、コロナショックによる経済低迷と消費マインドの落ち込みが長引けば、早晩不動産市場にも影響を及ぼすことは容易に想像がつきますが、短期間で収束するようであれば、相場はギリギリ持ちこたえるのではないかと考えます。