2020年6月 vol.223
2020年06月10日
梅雨入りを前に夏を思わせる天気が続いております。全国の緊急事態宣言が解除され、多くの学校で入学式や登校が始まり徐々にではありますが街にも活気が戻り始めました。
新聞や報道ではコロナ禍による経済の落ち込みの活字ばかりが躍り、テレビはコロナの話題と過去の収録番組ばかりです。最初の緊急事態宣言から2ヶ月。コロナ感染者を抑え込み医療崩壊を水際で防いだ一方で、経済の落ち込みや影響が戦後最悪とまで言われる中、これまでの取り組みを総括するような議論もあります。何が正解で何が失敗だったかを拙速に評価することはできませんが、人命と経済のバランスに正しい答えを見つけ出すことは不可能と言えます。まして、政治家も専門家も全てが未知の世界であり毎日が手探り状態なわけですから。
さて、私が日常の生活で感じていることを何点か列挙してみたいと思います。当社の代表電話は某信販会社と一桁違いで相似していることは全社員掌握しており、時折間違い電話がかかってきます。ところが、最近はその頻度が以前にも増して高くなったと感じています。おそらくは、カード利用者からの返済に関する相談や催促に対する折り返しの電話なのだと思います。実はこの間違い電話は、リーマンショックの時や東日本大震災直後の混乱期にも多く見られた現象です。ご察しかと思いますが、カード支払いの遅延は景気の変化と直結するものと言えます。
前々回から賃料交渉のお話をしてきましたが、経済活動が始まったからと言って直ぐにV字回復するものではありません。暫定で賃料交渉を済ませた案件もいずれは期限の到来とともに延長の相談が来るものと考えられます。以前より調整が難しいのは、既に給付金や融資制度などの支援策が打ち出されており、オーナーサイドのテナントへ寄り添う姿勢にも微妙な変化が見られる点でしょう。背に腹は代えられないのです。補正予算では、家賃を支援する制度が検討されているとのことですので予算の通過を待ちたいと思います。
4月には緊急事態宣言による自粛の影響もあり、貸店舗の賃料減額、時間貸し駐車場やコインランドリーに至るまで固定収入の減少が見られましたが、人々の往来が戻りつつある直近の数字では前年並みの水準にまで回復しつつあります。一方、業種によって事態はまだまだ深刻です。オリンピックを控え順調と目されていた観光業界や外食産業はコロナの直撃を受ける形になりました。この事態には備えようもありませんでしたし、正に晴天の霹靂です。緊急事態の解除と同時に客足が戻ったにしても新しい生活様式では、営業時間やソーシャルディスタンスなどの制約がある限り100%の回復は不可能です。原因はコロナです。これにより健全経営のお店が影響を受け、自信や気力をも喪失されてしまうことに大きな危機感をおぼえます。
高速道路での渋滞を経験された方は多いと思いますが、渋滞の原因が解消されたにもかかわらず、中々流れが戻らないことがあります。掲示板にはスピードを上げるよう促す注意喚起が表示されます。どこか経済に似ていると思いませんか?渋滞時の低速走行に慣れてしまい、流れを取り戻すのに時間を要してしまうのです。今回のコロナも色々な制約はあるものの緊急事態宣言は解除され、徐々に以前の生活に戻すようアナウンスがなされています。罹患率や重症化率などウィルスの特性もわかり始めてきました。もちろん、特効薬が存在しない現状においては脅威であることに違いはありませんが、国民全体が萎縮するあまり、この制約だらけの生活に慣れてしまう方がもっとも怖いことだと思いませんか?冠婚葬祭や接待など、乱暴に言えば無駄な慣習や付き合いで経済が回っているのです。これが自粛により省略され社会全体がコンパクトにまとまらないことを願います。
この間、ウィズコロナ・アフターコロナ・ニューノーマルなどの様々な表現が生まれました。長い歴史を振り返ると感染症がきっかけで、戦争の終結が早まったり、権力を誇った教会の権威が弱体化したり、労働力不足による民衆の力を抑え込むべき王政が強固なものになったりと様々な変化を繰り返してきました。不動産市場もコロナを機会に嗜好が変化する可能性があります。例えば、これまでは通勤を優先し都心部や駅近などの利便性が求められてきました。しかし、テレワークの普及により多少の利便性を犠牲にしても、書斎スペース確保のため広さが重視されるなど郊外へのシフトも一部では見られます。当然のことながらインターネット環境は必須と言えます。多くの企業がテレワークに手ごたえを示しており、オフィスの在り方や貸会議室の位置付けも展開の幅も多様化するものと考えられます。当社においても空室対策の一環として実験的にテレワーク向けの貸し出しを検証しております。この大きな社会の変化に乗り遅れぬよう知恵を絞って参る所存です。