2020年10月 Vol.227

2020年10月09日

 これまでの暑さから一転、朝晩はずいぶんと涼しくなり本格的な秋の訪れを感じるこの頃です。

下半期となる10月からはGoToトラベルキャンペーンに東京が加わり、GoToイートキャンペーンも始まります。果たして新型コロナの影響を直撃した経済に対し、起死回生の一手となるのでしょうか?関係者の期待も高まります。

 

 さて、菅新総理のもと新しい内閣が動き出しました。脱ハンコや携帯電話料金の値下げなど、我々国民の生活に身近な問題について強いメッセージが発信され、改革への意欲とスピード感が伝わってくる新内閣ですが、勢いのあまり途中で失速しないことを願います。

 

 本題に入ります。国交省は、9月29日に基準地価を発表しました。全用途の全国平均が3年ぶりに下落し、新聞各紙が「地価下落」の文字を一斉に報じました。特にコロナの影響により商業地の失速が目立ったようです。三大都市圏では商業地が0.7%と上昇幅が縮小、住宅地はマイナス0.3%で7年ぶりに下落に転じました。全国の商業地ではマイナス0.3%で5年ぶりの下落、住宅地もマイナス0.7%と下落幅が拡大しました。札仙広福の地方四都市は根強くプラスを維持しましたが、それでも上昇幅は縮小しました。基準地価は7月1日を基準日とするもので3月に公表される地価公示(1月1日時点)を補完する目的で定められています。地価公示の段階ではコロナの影響は織り込まれていませんでしたが、今回はコロナの影響による修正が加えられたものです。当初、今回の基準地価が大きく下げられた場合を想定し、7月1日に公表済の路線価を調整率により見直す措置も検討されていたようですが、全国的にそこまで急激な地価の落ち込みは確認できなかったようです。

 

 前述の通り、地価においては、4月~6月期のGDPのの落ち込みが年率27.8%と過去最大の落ち込みと同類のインパクトはなかったと言えます。前回のリーマンショック時の景気後退の際には、真っ先に金融不動産市場を直撃しましたが、当時とは異なり、現時点では金融が崩壊するほどのダメージを受けていないこと、意外にも今年上半期で東京の不動産に向けられた世界の投資マネーは1兆6千億円にものぼり、世界的な金融緩和による資金がコロナでも比較的安全で堅調な東京の市場に向けられています。ここでは、空室に苦心する中小零細規模のビルと堅調な大規模ビルで明暗が分かれているようです。住宅市場は、コロナの影響で年収が低い人ほど収入減少が見られ、比較的影響の少なかった中間層以上の世帯を中心に住宅取得意欲が旺盛のようです。この点においては、前回までのコメントを訂正しなければなりません。

 

 宮城県内の地価はどうでしょうか?仙台市を中心に周辺の名取、多賀城、岩沼、富谷などが住宅地、商業地とも堅調に推移、全国の商業地の中で上昇率は全国2位と上昇基調を維持しましたが上げ幅は縮小しました。他の大都市と比較しても、仙台はもともとインバウンド需要と無縁であったためコロナの影響が最小限であったこと、仙台駅周辺や地下鉄東西線沿線での再開発も上昇基調を維持できた要因と言えそうです。一方で、人口が減少する地方での下落率の落ち込みが目立ち、都市部との二極化はより鮮明となりました。日常の業務でも、仙台圏の地価はピークを過ぎたとは言え横ばいで堅調に推移し、取引価格が大きく下落するなど取引が停滞している印象はありません。

 

 年末にかけて冬のボーナスが支給されますが、早くも企業のボーナスカットの動きが報じられており住宅取得マインドに少なからず影響を与えると思われます。今後の地価動向を静観しようと買い控えの動きもあるかもしれません。経済状況と不動産は切っても切れない関係です。不動産の高止まりには不透明な要素も多く、今後の不動産市場は楽観できない状況と言えそうです。