2021年4月 vol.233
2021年04月09日
桜が満開の季節となりました。新年度がスタートし、街では新入生や新社会人の初々しい姿を目にする機会も増えました。歓迎イベントなどの制限を余儀なくされる中での船出ではありますが、必ず前途ある未来が待っていることを信じています。
さて、最初の緊急事態宣言から1年が経過しました。急速な感染拡大に歯止めがかからない仙台市内には「まん延防止等重点措置」が発令されました。試行錯誤の甲斐もなく全国的にコロナウィルスの感染は収まることを知りません。切り札であるワクチン接種と感染拡大との時間の攻防が続く中、病床ひっ迫と経済の狭間で自粛頼みの政策に限界を感じます。
本題に入ります。今年も地価公示が発表されました。基準日が1月1日となりますのでコロナ下では最初の地価公示となります。宮城県全体における上昇率は前年より縮小したものの、9年連続の上昇を示しました。仙台市の平均変動率は2.3%と9年連続で上昇した他、周辺市町村も8年連続で上昇となりました。一方、その他の市町は6年連続の下落となり、仙台圏の上昇(上昇率は縮小)に対し、その他の市町の下落率は前年より拡大しました。
商業地では、東北一の仙台市青葉区中央一丁目が4,160,000円/㎡で39年連続の最高価格地となりました。同じ商業地でも象徴的な事例が次の2地点でしょう。最も上昇を示した青葉区上杉二丁目が東北大農学部跡の再開発エリアの近傍地であり、最も下落した青葉区国分町二丁目は、コロナ下による繁華街での飲食店の撤退が反映された形となりました。
住宅地で10年連続の最高価格地となった青葉区錦町一丁目は、周辺が上杉を中心とした高級住宅地で近年の高値取引が反映された結果と言えます。
実務上の実感ですが、地価公示の通り仙台圏の不動産価格は高止まりの状態が続いていると言えますが、上昇率縮小が示すように一時の過熱は去ったと断言できます。今のところ、コロナ下による市場への影響は限定的でしたが、状況は楽観できず、今後の地価動向を見極めようとする慎重な姿勢が主流のようです。その流れからか、収益用不動産などは入居率や利回りなど以前より高い水準が求められる傾向にあり、その分在庫が増えた印象を受けます。もっとも、昨今の投資ブームもあり転売に次ぐ転売で販売価格自体が適性を欠いている物件が多いのも事実で、こうした物件の長期在庫が目立ちます。その陰で、希少物件の入札ではまだまだ高値落札が更新されているとの報告もあります。
また、住宅地は中心部の高級住宅地や地下鉄沿線などの需要が根強く、情報が流通する前に成約になっているケースも珍しくありません。そして、その影響は周辺へ広がり、結果的に仙台市以外の周辺市町である名取市、多賀城市、富谷市、利府町の取引価格にも波及しています。
最後に全国の地価についても簡単に触れておきます。全国平均変動率は、住宅地で5年ぶり、商業地は7年ぶりに下落に転じました。特に商業地の下落は、これまでインバウンドの恩恵を受けてきた都市ほどコロナの影響による下落が大きい印象を受けます。その代表的な例が大阪ミナミの28%の下落です。同様に各都市で落ち込みが目立つのがホテルや飲食店立地と言えます。これまで、金融緩和による投資需要とインバウンドで高騰を続けてきた不動産市況ですが、今後は更に商業地内でも地価の二極化が進むものと考えられます。例えば、稼働率がよく立地の良い大規模ビルなどは投資の対象として需要は続き、入居の厳しい飲食ビルなどは価格調整に入ると思われます。
コロナ下で企業業績にも明暗が分かれているように、比例して不動産の需給関係も当分はバランスが保たれるため、不動産市場全体がいきなりバブル崩壊的なクラッシュをおこすことはないと考えるのが自然でしょう。