2021年9月 vol.238
2021年09月10日
9月に入りました。朝露に秋の趣をひとしおに感じるこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、コロナの感染拡大により全国の多くのエリアに緊急事態宣言が発出されております。対象地域に占める人口分布は実に1億人と言うことですから、我が国の大多数が宣言下にあると言えます。法制度上の壁があるとは言え、自粛頼みの対策には限界があります。むしろ、この水準で維持できていること自体奇跡と言えるのではないでしょうか?そんな矢先に総理辞任のニュースが飛びこんで参りましたが、瞬間に株価が跳ね上がるという何とも皮肉な幕引きとなりました。
話は変わりますが、先ごろ国交省と法務省より、単身高齢者の安定した住居の確保を目的とした「残置物の処理等に関するモデル契約条項」いわゆるガイドラインが策定されました。背景には、近年、賃貸不動産の所有者が単身の高齢者に対し物件を賃貸することを躊躇し、高齢者が居住用不動産を確保できない問題が生じていることに端を発しています。敬遠される理由として、賃貸借契約期間中に賃借人が死亡した場合、相続人の所在が不明確であったり、物件に残された残置物処理が困難であるなどが挙げられます。そのため、これらの事後処理を円滑に行えるよう、モデル条項では次の2点がポイントとなります。
第1「解除関係事務委任契約」
賃貸借契約の存続期間中に賃借人が死亡した場合、合意解除の代理権、賃貸人からの解除の意思表示を受ける代理権を受任者に授与するものです。これにより、賃貸借契約の解除ができるようになります。
代理権の行使は相続人の利害にも影響を及ぼすため受任者は推定相続人のうち何れかの者とするのが望ましいのですが、推定相続人の所在不明や受任意思がない場合には、居住支援法人、居住支援を行う社会福祉法人のような第三者とするのが望ましいとされています。一方で、賃貸人が受任者となることは賃借人の利益を害する可能性があることから避けるべきで、我々物件の管理業者も賃貸人の委託を受けていることから、賃貸人の利益を優先することなく賃借人の利益の為、誠実に対応する必要があるとされています。
第2「残置物関係事務委託契約」
賃貸借契約の存続期間中に賃借人が死亡した場合、物件内の残置物の廃棄や送付等の事務を受任者に委託するものです。
本件の受任者についても、賃借人の推定相続人のうち何れかの者、居住支援法人、居住支援を行う社会福祉法人、物件の管理業者などの第三者と考えられます。ここでも、利益相反関係にある賃貸人の受任は避けるべきで、物件の管理業者においても賃借人の利益の為、誠実な対応が求められています。
これらが市場に浸透することにより、万一の際には次の入居募集が迅速に行えるようになり賃貸人のリスクが軽減されます。既に保証会社が対応する商品を提供しておりましたが、当社では様々なケースを想定し顧問弁護士のアドバイスを受けながら運用して参りたいと考えております。現に高齢者住宅の受け入れを専門にするポータルサイトなどでは、家主や不動産会社からの掲載問い合わせが増えているそうです。我が国が直面する超高齢化社会の現実を受け入れ、賃貸経営に組み入れて収益性を高めていければと思います。