2022年8月 vol.249

2022年08月10日

 残暑お見舞い申し上げます。酷暑の折くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げます。

 ここ仙台では、東北の夏祭りのフィナーレを飾る仙台七夕まつりが3年ぶりに制限の無い中で開催され、街にも少し活気が戻ったような気がします。

 

 この夏、各地で記録的な猛暑となっております。一方で、線状降水帯など急激な気象の変化により大きな被害が報告されており、宮城県でも大崎地方を中心に大変な被害に見舞われました。自然の猛威はこれにとどまりませんでした。追い討ちをかけるかのように、先だっても東北北陸地方の一部に豪雨が牙をむきました。豪雨災害というと西日本のイメージが強いのですが、最近では東日本でも台風の直撃を受けるなど、これまでの常識が通用しない災害が目立ちます。酷暑とコロナ禍、被災地の現状は想像を絶するものと思いますが一日も早い復旧をお祈り致します。

 

 さて、我が国のコロナ感染者数は二週連続で世界最多となっています。第6波のオミクロンを押さえ込んだことが、皮肉にも逆効果となったとの指摘もあります。アメリカではオミクロン株に対し国民の80%以上が免疫を持ったとの試算もあり、この間、日本では集団免疫低下、ワクチン効果の減少、人流増加などの影響で従来株より感染力の強いBA5が拡大したと見られています。そして、あろうことか未だに国や自治体、各機関、団体の足並みがそろわず、国民は事実上の自粛状態であり、対外的には鎖国状態と何ら変わりません。政治が覚悟をもって決断し、社会活動を本格化させなければ世界に遅れを取ってしまいます。

 

 金融政策においても我が国は世界の潮流に逆行していると言えます。世界的には急激なインフレにありますが、インフレ抑制にFRBも歴史的なスピードで利上げを実施、ヨーロッパ中央銀行も、イングランド銀行も相次いで利上げを発表しました。欧米諸国に比べ我が国のインフレ率は低水準に抑制されていますので、利上げによる経済活動の停滞の方がよほどリスクを伴うのは理解できます。日銀の見解の通り為替介入したところで、簡単に円安は収まりません。むしろ、各国との金利差を悲観するのではなく、従来、世界情勢が不安定になるほど安全な資産である円買いが進むはずが、今は逆の動きを示している事態を憂慮すべきでしょう。なぜならば、それは世界の中での日本の評価が低下していることを意味しているに他ならないからです。

 

 我が国が異次元の金融緩和政策に着手して久しいわけですが、当初から専門家などからは、即効性がある反面、底なし沼のように抜け出せなくなる劇薬だと指摘する声も少なくありませんでした。一昔前を思い起こしてみて下さい。円高がデフレの元凶のように扱われ、多くの日本の製造業は賃金の安い場所を目指し新興国へ生産拠点をシフトした。その結果、国内の産業の空洞化を招き多くの企業がリストラを断行、工場跡地がたたき売りされ、かつての企業城下町は衰退の憂き目を見たのでした。こうした当時の我が国の経済状況を考えれば、金融緩和は最善の選択だったと言えますし、限定的であれ一定の成果をあげたことは評価できます。しかし、当初目標としたデフレ脱却にはほど遠い状況です。市場で行き場を失った資金は一部で過熱するバブルを生み格差が広がったのも事実です。問題はこの金融緩和にどこで終止符を打つかということでしょう。金利が上がれば国債の利払いが増え、財政は益々ひっ迫してしまいます。金融緩和により日銀が集めた資金はETFを通し日本の株式市場に流れ続けています。平たく言うと、今や日銀が日本企業の大株主と言っても過言ではないのです。日銀がマーケットを買い支えている状況から簡単に手を引けませんので、正に自転車操業状態であると言えます。ほとんどの国民が景気回復の実感を得られなかったのは直接その恩恵を受けることができなかったからです。高度成長のように誰もが豊かさを感じるという錯覚は捨てた方が良いし期待すること自体無意味です。

 

 しかし、視点を変えて見れば、我が国の将来は決して悲観すべきものではありません。ウクライナ危機を契機に、今や企業の国内回帰が加速しようとしています。海外の企業も日本の不動産や人材、技術を求めやってきます。内製化できるものは積極的に推進します。労働力不足は更に深刻化するかもしれませんが、一方で賃金は間違いなく上がります。企業物価も消費者物価も上昇し好循環が生まれれば、長年にわたり苦しんできたデフレからの脱却も夢物語ではないかもしれません。