2023年4月 vol.257

2023年04月10日

 柔らかな春風が満開の桜を揺らしています。全国各地で実に4年ぶりとなる桜まつりなどのイベントが開催され、コロナ前の賑わいを取り戻しつつあります。多くの制限が緩和された中、新入学生、新社会人が希望をもって新生活をスタートさせたことでしょう。

 

 そんな新年度を迎えた日本を元気づけるかのように、先のWBCでは我ら侍ジャパンが歴史的な快進撃を遂げ、見事世界一の座を奪還しました。大会では、数多くのドラマと名言が生まれましたが、中でもMVPに輝いた大谷翔平選手の活躍は一際異彩を放つものでした。今や世界に誇る大スターへと駆け上った若干28歳の若者はまだまだ発展途上にあり、今後ますますの活躍が期待されます。

 

 さて、先日、地価公示価格が公表されました。これは国土交通省土地鑑定委員会が適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における全国約2万6千地点の標準地の正常な価格を3月に公示するもので、路線価や固定資産評価の基準にもなっています。これによると、全用途平均、商業地、住宅地ともに2年連続で上昇を示し、上昇率も拡大しました。三大都市圏では、東京圏、名古屋圏が2年連続の上昇、コロナの影響の大きかった大阪圏では3年ぶりに上昇に転じています。地方圏でも2年連続で上昇がみられ、札幌・仙台・広島・福岡のいわゆる地方4市では、全用途平均、商業地、住宅地のいずれも10年連続の上昇で上昇率も拡大しました。ある専門家の言葉を借りると、地価は二極化から三極化の時代に突入したとの見方があります。今後は、同一地区内においても観光需要や再開発などの有無が明暗を分け、「価値が落ちない・落ちにくい」、「なだらかに下落」、「価値が無い」といった構図が鮮明になると考えられているからです。

 

 東北では、宮城県の上昇率が住宅地、商業地ともに全国3位となり上昇が続いています。商業地では、オフィス需要が堅調な仙台市が6.1%の上昇。また、住宅地では岩手県が2001年以来の上昇を示し、青森、秋田は下落率が縮小しています。国交省のコメントによると「新型コロナウィルス流行前への回復傾向が顕著に表れた」とされていますが、地価上昇のキーワードは、前述の通り再開発などのプロジェクトと観光が挙げられます。商業地で3年ぶりのプラスに転じた秋田市では、秋田県全体で下落が続いたものの秋田市中心部の文化施設のオープンなどが呼び水となり、秋田駅前地区に分譲マンションが供給され完売するなど、既に相乗効果も表れているようです。

 

 私個人的には、形成された市街地において大規模な土地の供給が年々減少傾向にあるため、希少性の高い土地に相場以上での引き合いが生まれ、周辺相場を吊り上げている印象を受けています。争奪戦の末、仙台市内も空前のビジネスホテル、大規模ビルの建設ラッシュに沸いていますが、果たして支店経済に依存する仙台が潜在的需要をどれだけ喚起できるのか、その実力が試されます。いずれにしても需給バランスが地価に大きく関係していることは言うまでもなく、都市や観光地としての魅力とポテンシャルが大きく影響し、街の栄枯盛衰を物語っているように窺えます。一例を挙げると、バブル期に団体旅行などを中心に栄華を誇ったような日本人向け観光地の地価は下落の一途をたどる一方、外国人観光客などの回復も見られる京都などの観光地は上昇傾向にあるようです。また、外国人向けリゾート地や今年からプロ野球日本ハムファイターズの本拠地となる北海道ボールパークFビレッジ周辺の地価は、周辺開発による利便性向上や期待値で上昇を示しています。

 

 地価は経済のバロメーターという側面を持ち合わせております。昨今の物価高騰により、我が国の労働者の賃金是正が大きくクローズアップされているのと同様、日本の国土はバブル期の半分の価値にまで目減りしたとされています。都市部と地方の格差がもたらした結果とも言えそうです。