2023年5月 vol.258
2023年05月10日
今年のゴールデンウィークは全国的に五月晴れに恵まれました。そして、実に4年ぶりとなる制限のない中でのゴールデンウィークに日本中がかつての賑わいを取り戻したかのようです。長い間、苦しまされた新型コロナウィルスが感染症法上の5類への引き下げが目前となっていることに加え、コロナ禍の自粛疲れによる反動もあってか、全国の観光地ではコロナ禍前を上回る人出を記録した地域もあったようです。
大手旅行代理店による事前調査では、各種経済指標・交通各社の動き・宿泊施設の予約状況・定点意識調査などをもとに総旅行者数2470万人、総旅行消費額9040億円との推計が公表されておりました。このうち、国内旅行はコロナ前の水準を回復するとの見通しが示されておりましたので、まさに期待通りの水準まで観光需要が回復したと言えそうです。
私自身は、今年も混雑を避け、家で巣ごもり生活を満喫しておりましたが、普段の平日や週末などは首都圏を中心に出張する機会も増えました。ここ3年は、リモートによる研修や打ち合わせが主体だったものが、徐々に対面での従来型に戻りつつあります。そんな日常に都内や観光地は、インバウンドの人々が本当に多くなった印象を受けます。盛岡の知人は、ニューヨークタイムズ紙の紹介により盛岡が今年行くべき都市のひとつに選出されたことを契機に海外からの注目を集め、急にインバウンドが増えた現状を熱く語ってくれました。私自身も、東京からの帰りの新幹線でそれを裏付けるような体験をしました。それは、東京出張の平日夕方のこと。帰りの東京発盛岡行きのはやぶさ号は、東京駅ではまだ空席が目立ちましたが、大宮駅から大勢の欧米人らしき方々が乗車してきて瞬く間に満席状態に。ここから先はあくまでも推測の話ですが、一行は大宮を経由地に新宿や渋谷、はたまた金沢や軽井沢あたりから次の目的地へ向かったのではないでしょうか?観光か視察かと思しき方々は、少なくとも団体ではなさそうな面々。そして、この後に少し前では考えがたい光景を目の当たりにすることになったのです。一行は、次の停車駅である仙台で誰一人下車することはありませんでした。と言うことは・・・、おそらくはその先の盛岡へ向かったのでしょう。
地方4市として、地価上昇率では常に脚光を浴びることの多い仙台ではありますが、世界的な知名度は今ひとつ。地方4市のうち、札幌市は世界的スキーリゾートとしても知名度が高い北海道の中心、新幹線の延伸や冬季五輪招致への期待も相まって大規模開発も盛んと聞いています。おこがましくも、仙台市長がライバルと名指しした我が国第4の都市福岡市は、博多ビッグバンに代表される通り、年々街並みも変貌を遂げいつも活気に溢れています。仙台と比較的規模の近い広島市も被爆地としての側面もあり世界的知名度では仙台よりも数段上と考えられます。もはや仙台市は、インバウンド需要で大きく他都市に水を空けられています。誤解を恐れずに言えば、牛タンでしか国内観光客を呼び込めないリトル東京に成り下がってはいないでしょうか??
訪日客の多くは成田、関空、羽田を経由地としています。首都圏を拠点に観光すると仮定します。大陸を移動することに慣れた欧米やアジアの人々にとって、強行スケジュールを組めば、都内観光後に地方へ移動、日帰りで都内に戻ることもさほど苦にならないはず。しかも、鉄道網が発達した国内において、訪日外国人はJR各線が乗り放題となるジャパンレールパスなる何とも便利なサービスを享受することができます。仙台は、定番の東京‐京都より更に短時間で移動が可能です。それにもかかわらず、残念ながら杜の都を標榜するほど、圧倒的と言えるほど都市公園面積は広くありません。外国人は日本人ほど牛タンを好んで食べないと聞きますし、都会を求めるならば100万都市は全国に12ケ所も存在します。求められるのは、圧倒的個性と言えるでしょう。益々行政の手腕が問われるわけですが、我々不動産会社など、民間の知恵と役割も重要と言えましょう。