2024年9月 vol.274

2024年09月10日

 先ごろ発生した台風10号は交通など各方面に大きな混乱を招き、広範囲に甚大な被害をもたらしました。被災された地域の一日も早い復旧をお祈り致します。

 

 オリンピックパリ大会が17日間の日程に幕を降ろしました。今大会でも数々のドラマが生まれ、我が日本勢は過去最多のメダルラッシュに沸きました。結果を出した選手、目標に届かなかった選手、引退を決めた選手と様々でしたが、それぞれが次の未来に向け歩き出したことでしょう。そして、栄光のバトンは、パラリンピック選手団へと引き継がれその活躍が期待されます。

 

 今、日本から野球大谷翔平選手、ボクシング井上尚弥選手、ゴルフ松山英樹選手など、傑出したスポーツ選手が次々と誕生しています。彼らは世界の壁を超えただけでなく、彼らを中心にその競技が動いていると言っても過言ではない存在です。競技の枠を超えた世界トップレベルの若者達を輩出する背景、日本がスポーツ先進国になり得たのは何故なのでしょうか? もちろん、色々な要素が考えられるわけですが、世間の論評と私の主観を交えて考察します。

 

 我が国の経済成長と同時に食の欧米化が進み日本人の骨格は大きく変化しました。生活が豊かになるに連れモノからコトへ日本人の消費行動も変化を遂げました。最近のインバウンド消費の傾向とどこか似ています。言うまでもありませんが、少子化に伴い幼少期から子供に対し英才教育を施すことが可能になったのは最たる例です。もちろん、先進国の少子化は日本に限ったことではありません。衛生・栄養面や医療の進歩により子供が成人するまでの生存率が劇的に向上したことに加え、家業から産業へ近代化が進み、一家族に対し多くの子供の手伝いを必要としなくなったと、ハンス・ロスリング氏は著書の中で説いています。

 

 スポーツ科学の発達も日進月歩です。一昔前までのスパルタど根性の世界から、科学的根拠に基づいた分析とデータの蓄積により緻密で効率的なトレーニングが可能となったのです。メンタルトレーニングの定着も心身の強化に寄与していると考えられます。こうした働きも先進国共通だと思いますが、果たして世界との差を縮めた根本理由はどこにあるのでしょうか?そこで次のような展開が成立しないでしょうか。すでに骨格の変化や学校教育の充実により、日本人の潜在的身体能力は格段に向上していました。しかし、これまでは潜在能力を養う機会が少なかったのではないかと考えます。私の少年時代はスポーツと言えば野球くらいのものでした。地域にも多くの少年野球チームが存在しましたし、放課後は自然と野球やサッカーに触れ合う環境が整っていました。というよりも、それ以外の選択肢が少なかったのだと思います。今や情報化社会において、様々な競技の情報や基礎を習得することが可能となり、子供自らの意思で専門的なクラブなどに参加する機会が増えたことが関係していると考えます。専門性の高い育成組織の存在と選択肢の増加が潜在能力を押し上げたと言えるのです。多くの成功例は、幼少期からの基礎教育にあると結論付けることができないでしょうか。

 

 そして、これも世界に共通することですが、インターネットの普及により全世界が身近なものとなったことで、バーチャルで様々な体験ができるようになりました。仮に、海外へ足を運ばずとも海の向こうは遠い存在ではなくなったのです。だからこそ、現代の若者はコミュニケーション能力が低いなどと評価されていますが、私はそんなことは無いと思います。むしろ、インターネットで世界とつながっている分、劣等感や垣根が排除され臆することなく世界と向き合うことができるのが競技の上での強みになり得るのです。傑出した選手に共通する点は、才能・環境・指導者、そして何よりも本人がそのステージに立つことを誰よりも強く願い努力を続けた結果に違いありません。

 

 小学時代の卒業文集のことを覚えている方も少なくないと思いますが、思い描いた夢を叶えた人の割合はおよそ1割だそうです。私はこの数字を目の当たりにして率直に高いと感じました。あらゆる分野において世界を舞台に活躍する若者はこれからもっともっと誕生することでしょう。まだまだ日本の未来も捨てたものではありません。自信をもって頑張ろうニッポン!!