2021年10月 vol.239
2021年10月08日
暦は10月を数えましたが季節外れの暑さが続いております。少々実感に乏しい秋ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、新内閣の発足と時を同じくして新型コロナによる緊急事態宣言が解除されました。いよいよアフターコロナの新しい時代が始まろうとしております。とにかく、疲弊した経済を回復させることが新内閣に課された急務と言えるでしょう。観光庁によると、昨年1年間のホテル全体の稼働率は34.6%にとどまり、旅館業の稼働率に至っては25%という衝撃的データがあります。一例ですが、先日、仕事の為、緊急事態宣言下の京都を尋ねましたが、インバウンドに沸いた四条通りはシャッター通りと化し、花街で知られる祇園は人影もまばらで、往時の賑わいが嘘のような光景を目の当たりにしてきました。
仙台も例外ではありません。中心部の名掛丁から一番町にかけてのアーケードはテナント募集の貼り紙が目立ち閑散としています。ほとんどが物販店と飲食店の退店と見受けられますが、リーマンショック時よりも空テナントが目立つ印象さえ受けます。当時と決定的に異なるのは、当時は地元の商店主が廃業し不動産賃貸業に転身した結果、後継テナントとして多くのナショナルチェーンが軒を連ねたのに対し、今回は有力テナントが撤退した為、後継テナント選びには時間を要す可能性があります。一方、同じ商業地でもオフィスビルは堅調で、業種により明暗が分かれていることは明白であります。最近は、リベンジ消費なるワードを目にしますが、長引く自粛疲れで旅行や飲食などに代わり、消費が高級車やハイブランド商品などに流れている現状を表したものです。但し、これも限定的であり、全般的には百貨店の売り上げ低迷が示す様に消費回復には程遠い状況です。コロナ禍による自粛で都市部の百貨店ではインバウンド以外にも、地方客や高齢者客の減少が顕著で、その窮状が報告されています。アフターコロナへの期待の高まりと同時に、行動抑制や第6波への懸念など、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。
話題は変わりますが、9月21日に国土交通省から基準地価が発表されました。これは春の地価公示を補完する目的で7月1日時点の都道府県の地価を示したものです。発表によると全用途の全国平均は前年比マイナス0.4%で、下落は去年から2年連続となりました。コロナ禍による影響で特に商業地の下落幅が目立ちます。逆に住宅地はやや改善しています。テレワーク需要により郊外や地方への移住も期待されてきましたが、その効果はかなり限定的のようです。むしろ、東京都心のマンションなどはオンライン商談なども浸透、供給量の調整も奏功してか、売れ行きも悪くないと聞きます。連動して中古市場は常態的なタマ数不足で価格の高止まりが続いています。
その一方で、インバウンド特需の反動で店舗の撤退が相次いだ大阪道頓堀地区は商業地としての下落率がワースト1位、その他の地域でも観光に依存してきた街ほど商業地の下落が目立ちます。工業地域については、巣ごもり需要の増加により配送拠点などの整備が進み地価を押し上げた形となっているようです。
宮城県内の地価はどうでしょうか?全用途平均では0.7%上昇し9年連続でのプラスを示しました。東日本大震災の復興特需の収束や、コロナ禍による経済低迷により商業地での下落が目立ちましたが、住宅地は引き続き堅調に推移しており全体の水準を押し上げたと見られています。住宅地の上昇率上位には仙台市近郊の都市でも人気の住宅地がランクインしました。理由として、仙台市内の住宅地で地価の上昇傾向が続いた為、近郊の住宅地に需要が流れたと見られます。住宅地においては、地価上昇が周辺都市に波及した結果、更に外の市町村でも需要が旺盛な印象を受けます。バブル期に都市部の地価が高騰した結果、ドーナツ化現象で郊外へ住宅が広がった光景が思い出されます。
今年は、3年に一度の固定資産の評価替えの年です。評価額が上昇した土地でも、今年度に限ってはコロナ禍による特例措置で課税標準額の調整が行われ、固定資産税額が据え置かれています。